異次元からの帰還 遊戯王最強格の帰還カード
【前書き】
【第4期の歴史7 「連続魔法」誕生 ワンキルコンボに悪用され放題だった時代】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【異次元からの帰還 次元融合とどちらが強いか】
レギュラーパックである「RISE OF DESTINY」から多数の実戦級カードが参戦し、当時の環境に様々な影響を及ぼしました。
しかし、それと同日に販売された「PREMIUM PACK 7」からも目を引くカードは現れています。将来的に【ヘルテントーチ】のキーカードを務める「ヘル・テンペスト」が誕生したのもこの時です。
そして、何よりも大きな出来事は「異次元からの帰還」の誕生に他ならないでしょう。
ライフポイントを半分払う。ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。エンドフェイズ時、この効果によって特殊召喚されたモンスターを全てゲームから除外する。
効果は単純明快、除外されている自分のモンスターを可能な限り帰還させるという強烈な罠カードです。その分ライフコストは半分と重く、気軽に撃てるカードではありません。
また、この効果で帰還させたモンスターはエンドフェイズに再び除外されてしまうデメリットがあるため、漠然と使っても無駄撃ちになってしまう弱みもあります。基本的には自分のターンに発動し、総攻撃を仕掛けるなどエンドカードとして使うことになるでしょう。
類似カードである「次元融合」との相違点は以下の通りです。
①:罠カードであり、引いたターンにすぐ発動できない。
②:ライフコストの消費が固定ではない。
③:自分のモンスターのみを帰還させることができる。
④:帰還させたモンスターは1ターンしか維持できない。
現在の価値観では①が配点の大部分を占めるため、「次元融合」の方がカードパワーは高いと言えるでしょう。もちろん、「異次元からの帰還」も凶悪なカードであることに変わりはありませんが、カード評価としてはそのようになります。
しかし、第4期当時はゲームスピードの関係上、魔法・罠カードの速度の違いはそれほど重要ではありませんでした。そのため、現在とは違って完全な相互互換カードと考えられており、むしろ一部ではこちらの方が高い評価を受けていたほどです。
【次元斬】超強化 最強のエンドカード
当然、この「異次元からの帰還」を最も効果的に活用することができたのは【次元斬】に他なりません。
デッキコンセプトの関係上、特に意識しなくとも自然と除外ゾーンが肥えていくため、ほぼ無条件で3枚積むことができます。「次元融合」と違って相手モンスターを帰還させることもなく、中盤以降は確実にアドバンテージに繋がるカードです。
また、不利な状況であれば相手ターンに発動して壁にすることも考えられます。その場合はライフコストのついた「和睦の使者」のような扱いになるため、あまり強い使い方ではありませんが、いざという時に防御カードとしても使えるエンドカードと考えれば悪い話ではありません。
もちろん、3~4体のモンスターが除外されていれば一気にゲームエンドに持ち込むことも不可能ではないでしょう。この時期は「異次元の女戦士」や「D.D.アサイラント」が汎用アタッカーとして活躍していたため、自分どころか相手のお陰でこうした状況が成立することも珍しくありません。
そのため、【次元斬】を相手にした場合は「異次元の女戦士」の除外効果の使用を可能な限り控えるなど、新たな定石が生まれていくことになります。お互いに除外ゾーンの枚数を常に意識しなければならなくなったため、次第に「除外アドバンテージ」の概念が強まっていきました。
ちなみに、この「除外アドバンテージ」の概念は遊戯王の歴史の中で一旦途絶えています。厳密には、一部のデッキでのみ重視されることもある特殊なアドバンテージという扱いを受けていました。
というのも、この「除外アドバンテージ」の大半を担っていたのが「次元融合」「異次元からの帰還」の2枚だったため、これらが規制強化されるにつれて衰退の道を辿っていったからです。第5期~第6期中に「次元融合」が禁止カードに、「異次元からの帰還」が制限カードになったことで大幅に概念が縮小し、ほとんどの状況では気にする必要がない概念へと変わっています。
その後、第9期に入って大幅なインフレが発生したことで再び概念が持ち上がり、「除外は第3の手札」といった価値観へと繋がっていきました。流石に「墓地」ほど重要な概念ではありませんが、除外ゾーンを駆使して立ち回るデッキは今となっては珍しいものではなくなっているのではないでしょうか。
【カオス】微強化 活かすには工夫が必要
次点で「異次元からの帰還」を活かすことができたのは【カオス】です。
何と言っても遊戯王で初めて「除外アドバンテージ」を確立したデッキであり、当然と言えば当然の話です。【カオス】の特殊召喚コストとして除外したモンスターをそのまま帰還させられるため、デッキの爆発力を大きく高めることができます。
ただし、この時期は規制によって【カオス】の枚数が減っており、コンスタントに除外ゾーンを肥やすのは難しくなっていたことは事実です。続く9月には「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」が禁止カードに指定されることもあり、採用には一考を要するカードであったとも言えます。
元々、この時期はどちらかというと【ウイルスカオス】が主流の型に変わっていたため、そもそも採用候補に挙がること自体が少なかったことは否めません。全盛期であれば文句なしでフル投入できたカードですが、実際にはそれほど使われていたわけではなかったのではないでしょうか。
【当時の環境 2004年8月5日】
【第4期の歴史6 死者転生 遊戯王史上初の万能サルベージ】以降の前中後編の記事内容を総括した項目となっています。ご注意ください。
「死者転生」という万能サルベージカードの誕生を受け、様々なデッキで活用法が見出されていくことになりました。当時は「キラー・スネーク(エラッタ前)」や「深淵の暗殺者」などの手札コストに適したモンスターが現役を務めており、コストにかかる負担を軽減しやすかったことも理由の1つです。
とりわけ【深淵1キル】での活躍は目覚ましく、おおよそ必須カードに近い扱いを受けています。他にも、「深淵の暗殺者」を採用するタイプの【ウイルスカオス】などで採用候補に挙がることがあるなど、汎用性の高い実戦級カードとして見られていました。
「連続魔法」の参入が及ぼした影響も極めて大きく、【サイエンカタパ】や【デッキ破壊1キル】などの先攻1キルデッキで有力な新人として取り上げられています。普通のデッキではまともに使えないピーキーなカードですが、コンボさえ決まれば勝てるデッキでは重いデメリットも全く問題とはなりません。
実際に【サイエンカタパ】では3積み必須のデッキパーツとして扱われ、末期に至るまでデッキの枠を埋め続けています。「連続魔法」そのものは全く悪くありませんが、当時は「遺言状」などの極悪魔法カードが現役を務めていたため、このような扱いに繋がってしまったのではないでしょうか。
「異次元からの帰還」については上記で解説した通りです。【次元斬】を筆頭に、除外ゾーンを肥やしやすいデッキでは採用候補に取り上げられ、しばしばエンドカードとして活躍していました。
総評としましては、この時のカードプール更新では【サイエンカタパ】や【デッキ破壊1キル】、【深淵1キル】などのコンボデッキに勢いがついてしまった印象です。【次元斬】が強化されるなど、ビートダウン界隈にも動きがないわけではありませんでしたが、コンボ界隈のそれと比べればささやかな変化であったとも言えるでしょう。
【まとめ】
前記事、前々記事と合わせて、「RISE OF DESTINY」と「PREMIUM PACK 7」の販売によって起こった出来事は以上となります。
多数の汎用カードが新たに誕生したものの、その恩恵を最も受けたのは先攻1キルデッキでした。
特に【サイエンカタパ】の更なる加速は凶報と言うほかありません。これまで以上にコンボの成功率が高まってしまったため、当時のプレイヤーは理不尽な先攻1キルに苦しめられることになりました。
もはやプレイヤーの手で解決できる問題ではなく、公式の対応が必要であることは火を見るよりも明らかだったのではないでしょうか。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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