デステニー・ドローが汎用ドローソースとして出張されていた時代
・前書き
・【デステニー】系列アーキタイプを生み出したカード
・ターボ軸【デステニーブレード】の成立
・安定志向 【デステニービート】の台頭
・【マジキャン】の末裔 【デステニーキャンセラー】
・まとめ
【前書き】
【第5期の歴史10 カードガンナー逆風の時代 パワーカードなのに目立たなかった頃】の続きとなります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【デステニー】系列アーキタイプを生み出したカード
オーバーパワーなカードが多数飛び交うインフレ環境に現れた新星、それは「デステニー・ドロー」という魔法カードでした。
手札から「D-HERO」と名のついたカード1枚を捨てる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。
本来は【D-HERO】カテゴリの専用サポートにあたるカードで、手札1枚をコストに2ドローを行うシンプルな効果を持っています。アドバンテージ面では2:2交換となるため、往年のドローソース「強欲な壺」のように手札を増やすことはできませんが、そもそも手札が増える「強欲な壺」の方がおかしいだけであり、このカードも十二分に優秀と言っていいドローソースです。
実際に後世では準制限カード、制限カードの両方の規制を経験しており、条件の緩いドローソースがいかに危険であるかを実績として物語っています。現在ではカードプールの変化もあって無制限カードに落ち着いていますが、イメージとしては一時期の「闇の誘惑」に近い扱いを受けていたと言っても過言ではありません。
もっとも、これは他デッキへの度重なる出張が問題となったがゆえの規制、要は純正の【D-HERO】にとってはとばっちりに近い話でもありました。
これには当時「E・HERO エアーマン」が無制限カードとして暴れまわっていたことも影響しています。これを3積みする【エア】系デッキにとっては「デステニー・ドロー」のコストを工面するのも難しいことではなく、ほぼ汎用ドローソースに近い感覚で取り回すことができたからです。
それどころか、上述の通り現在ほどドロー・サーチギミックが豊富ではなかった当時においては「多少の無理を推してでも積みたい」有用なカードであったため、これ以降は「デステニー・ドロー」を効果的に活用することを目的に据えた新規のアーキタイプがいくつも成立していくことになりました。
ターボ軸【デステニーブレード】の成立
上記のうち、最初に環境の表舞台に躍り出たのは【デステニーブレード】と呼ばれるデッキです。
デッキ名の通り、当時のトップデッキの筆頭【エアブレード】の派生にあたるデッキで、コンセプトとしては「従来の【エアブレード】以上に速い【エアブレード】」といったイメージが当てはまります。具体的にどのような構成のデッキなのかについては、非常に乱暴な言い方ですが「【エアブレード】に「デステニー・ドロー」を積んだもの(※)」という表現が想像しやすいのではないでしょうか。
(※もちろん、その補完として「D-HERO ダイヤモンドガイ」を増量するなどの細かい調整は入ります)
これまでの【エアブレード】は手札に固まってしまった「D-HERO ダイヤモンドガイ」を効率的に捌いていく手段に乏しく、結果的に除外ゾーンが肥え切らないまま「次元融合」を撃たざるを得なくなるシチュエーションが一定数存在していました。
もちろん、そうした部分的な弱みは圧倒的なデッキパワーによって塗り潰せる些細な欠点でしかありませんでしたが、それでも敗因の一部を占めていたことは否定できません。しかし、「デステニー・ドロー」の存在はそれを綺麗に解消するどころか、逆にメリットとして変換することさえ可能としてしまったのです。
これによって間接的に「E-エマージェンシーコール」が腐りにくくなったことも利点のひとつで、「E・HERO エアーマン」のサーチ効果が無駄になってしまうケースが格段に減っています。
さらに、本来は採用枚数を吟味する必要のあるサーチカードを気兼ねなく積めるようになるため、ある程度の疑似的なハンデス耐性が得られるメリットも侮れません。これは「ダスト・シュート」「マインドクラッシュ」全盛の時代であった当時においては非常に心強い優位点でした。
このように、【デステニーブレード】には本家にはない複数の強みがあったため、以降のメタゲームでは次第に勢力の一角として認知されていくようになります。特にデッキの回転力に優れていることは極めて重要な意味を持ち、型によっては「冥府の使者ゴーズ」すら切り捨ててターボに特化することもあったほどです。
一見するとリスキーに思える非常に前のめりな選択ですが、これは「モンスターゲート」との兼ね合いも意識した構成となっていました。
というのも、【エアブレード】において「モンスターゲート」から出てくる「冥府の使者ゴーズ」は「可もなく不可もなく」の結果でしかなく、単刀直入に言ってあまり強い引きではありません。もちろん最上級打点がいきなり現れる動きが弱いはずはないのですが、やはり「次元融合」の発動を最終目標に据えている関係上、単純に2体目以降の「E・HERO エアーマン」や「D-HERO ダイヤモンドガイ」を引き当てる方が動きとして強い(※)ケースも少なくないのです。
(※もちろん、最大の大当たりは「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」であることは言うまでもありません)
つまり、「冥府の使者ゴーズ」不採用という構成は「モンスターゲート」の裏目を極力排した選択でもあり、これにより明確なハズレは「ならず者傭兵部隊」のみに限定される形となります。これについてはあらかじめ「増援」などで手札に引き込んでおくことでリスクを回避でき、その場合は事実上「何を引いても当たり」という状況を作り出すことさえ可能でした。
安定志向 【デステニービート】の台頭
一方、上記の【デステニーブレード】とは対照的に、純粋にドローソースとして「デステニー・ドロー」を活用するデッキも現れています。
いわゆる【デステニービート】と呼ばれるデッキで、その名の通り【D-HERO】を軸に据えたビートダウンデッキの一種です。
ただし、必須と言われていたのは「D-HERO ダッシュガイ」だけであり、次点の候補としては「D-HERO ドゥームガイ」や「D-HERO ダイヤモンドガイ」が並ぶ程度です。デッキ名に反してカテゴリデッキとしての顔はほぼ持っておらず、事実上は【グッドスタッフ】に分類すべきデッキと言えるでしょう。
通常の【グッドスタッフ】、つまり【サイカリエアゴーズ】ではなくこれを使うことの利点については、上記の「デステニー・ドロー」を除けば「D-HERO ダッシュガイ」の墓地誘発効果にその大部分が集約されます。
本来の「ドローしたモンスターを特殊召喚する」という使い方はもちろん、特に「墓地でモンスター効果が発動する」という点が非常に重要で、これによって「死霊騎士デスカリバー・ナイト」を後腐れなく処理できる魅力はおまけの一言で片付けるには惜しい利点です。
逆に欠点としては、やはり単体では扱いに困ってしまうことが多く、【グッドスタッフ】本来の強みである「手札事故を起こしにくい」というメリットが少なからず潰れてしまっていることは否めません。そのため、この時期に【デステニービート】を使うかどうかの判断については、それぞれプレイヤーの好みによるところも大きかったのではないでしょうか。
【マジキャン】の末裔 【デステニーキャンセラー】
その他、【デステニーブレード】の更なる派生型として、魔法封殺能力を持った「マジック・キャンセラー」を絡めた【デステニーキャンセラー】と呼ばれるデッキも開発されています。
もちろん、これは【エアブレード】を仮想敵に見据えた選択で、後出しが弱いという「マジック・キャンセラー」の欠点をデッキの高速化によって強引に補った形です。また、このサポートとして当初は使い道の乏しさから低評価気味だった「D-HERO ディアボリックガイ」を採用した非常に珍しいデッキでもあります。
各種サーチカードの恩恵で「E・HERO エアーマン」を安定して手札に確保、そのまま相打ちを取られてしまうことから、これまで「マジック・キャンセラー」は【エアブレード】対策としては不十分なカードとされてきました。しかし、逆にこのサーチをゲーム最序盤で止めてしまえば展開の大半を封じることができ、「E・HERO エアーマン」の素引き以外では突破されない強固なロック(※)として成立することが判明したのです。
(※「D-HERO ダイヤモンドガイ」の魔法コピーは素通しですが、運が絡むためリスクは低く、また返しのターンに戦闘破壊することで被害を最小限に抑えられます)
ここにダストマイクラセットや「神の宣告」を併用し、「E・HERO エアーマン」の召喚を未然に防ぐことができれば勝利は目前となります。とにかく序盤を固めることが最重要視されるため、場合によっては相手の後攻1ターン目スタンバイフェイズにいきなり「マインドクラッシュ」を撃つ(※)ことさえあったほどです。
(※つまり、今一番使われたくないカードを勘で指定するという使い方です)
とはいえ、現実問題として毎ゲーム都合よくロックが決まるとは限りません。むしろロックどころか自分が手札事故を起こして負けることも少なくなく、メリット以上にデメリットが目立ってしまう気難しいデッキとも言えます。
一応、当時のトーナメントシーンでも一定の結果を残してはいましたが、これを使用するにはデッキ構築センスを含め、かなりのスキルを問われる上級者向けのデッキだったのではないでしょうか。
【まとめ】
前記事と合わせて、各デュエリストパックの販売によって起こった出来事は以上です。
ここで誕生した新規カードのうち、即座にメタゲームに影響を及ぼしたのは「デステニー・ドロー」だけでしたが、「カードガンナー」を筆頭に複数のパワーカードも人知れず参入してきています。カードプール増加数としては僅か15種類の追加ですが、その分中身は非常に濃く、少数精鋭の名に恥じない優良パックだったと言えるでしょう。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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