ドローソースの規制とクリッターの裁定変更 初期エクゾディアの最期
【前書き】
【第1期の歴史22 暴走するエクゾディア 果てしないソリティア・ゲーム】の続きとなります。ご注意ください。
ひたすら環境を荒らし続ける【エクゾディア】の勢いはとどまるところを知らず、いよいよ遊戯王OCGの基盤そのものに亀裂が走り始めていました。
もはやカードプールの拡大による環境の変化ではどうにもならない段階に達したことは明らかです。率直に申し上げて、根本的な治療に着手せざるを得ない事態に陥っていました。
数ヶ月間に渡って静観を続けてきたコナミでしたが、2000年4月1日の制限改訂で遂にその重い腰を上げることになります。
【PREMIUM PACKの一般販売】
が、一旦環境の話からは離れ、この時に生まれたやや特殊なカード群についても軽く触れておきます。
2000年3月23日、「DARK CEREMONY EDITION」が販売され、新たに8種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは717種類となり、ここで第1期世代の全てのカードが出揃っています。
この時のパックは「PREMIUM PACK 2」の収録カードを全て含んでおり(※)、事実上それらの再録パックという形です。レアリティは「ウルトラレア」から「スーパーレア」に格下げされていたため、コレクションアイテムとしての価値は多少落ちる形となります。
(※この辺りの販売形態変更の詳しい背景については下記の記事をご参照ください)
パックの価格は400円と通常パックの3倍近い値段に設定されており、纏め買いするには勇気の要るパックでもありました。しかし、収録カードは全16種と少なく、自力でのコンプリートもそれほど難しくはなかったと記憶しています。
ちなみに、このパックの収録内容は儀式モンスター8種+専用儀式魔法8種と完全に儀式関連となっており、またそれぞれの儀式セットが3セットの計6枚が1パックに封入されていました。
とはいえ、これで【儀式召喚】を構築するのは無理があり、やはり用途は観賞用にとどまる形となりました。
【制限改訂 2000年4月1日】
2000年4月1日、遊戯王OCGにおいて2回目となる制限改訂が行われました。
この時から、制限カード(デッキに1枚だけ入れられるカード)の他に、準制限カード(デッキに2枚まで入れられるカード)の概念が取り入れられています。しかし、禁止カード(デッキに入れられないカード)の概念はまだ生まれていません。
制限カードに指定されたカードは以下の11枚です。
封印されしエクゾディア | 無制限 |
---|---|
封印されし者の左足 | 無制限 |
封印されし者の左腕 | 無制限 |
封印されし者の右足 | 無制限 |
封印されし者の右腕 | 無制限 |
強欲な壺 | 無制限 |
心変わり | 無制限 |
サンダー・ボルト | - |
ブラック・ホール | - |
遺言状(エラッタ前) | 無制限 |
聖なるバリア -ミラーフォース- | 無制限 |
準制限カードに指定されたカードは以下の3枚です。
死者蘇生 | 無制限 |
---|---|
天使の施し | 無制限 |
ハーピィの羽根帚 | 無制限 |
無制限カードに緩和されたカードは以下の1枚です。
落とし穴 | 制限 |
---|
以上が当時コナミから下された裁断となります。
まず目につくのは、全てのエクゾディアパーツが制限カードに指定されている点でしょう。
デッキにそれぞれ1枚ずつしかパーツを入れられないため、単純に考えてもパーツが揃う確率は下がります。
実際にはデッキの濃度、不要牌率などの関係から一概に良い悪いで表せるものではありませんが、総合的には【エクゾディア】に不利となる改訂です。ピン挿しのカードを5枚揃えなければならず、かなり深くデッキを掘り進める必要性が出てきました。
しかし、「強欲な壺」が制限カード、「天使の施し」が準制限カードと二大ドローソースが同時に規制されてしまい、これらに任せた強引な発掘は成立しにくくなりました。
これまではドローによってある程度パーツを集めた後に、サーチで補完するという流れが基本でした。この内のドローが抜けてしまったため、規制後はサーチに頼ったプランを選択せざるを得ない状況に追い込まれています。
しかし、サーチ型プランの最終兵器である「遺言状 (エラッタ前)」も制限カードに指定されるなど、ことごとく手を打たれてしまう形となりました。【エクゾディア】を非常に強く意識した改訂であることは明らかであり、完全に息の根を止めにかかっていることが分かります。
クリッチー 裁定変更
何より致命傷となったのは、「クリッター(Vol.6)」「黒き森のウィッチ(Vol.6)」の裁定変更が行われた点でしょう。
これまでは「どこから墓地へ送られても」サーチ効果を発動できる挙動となっていました。しかし、この時に「フィールドから墓地へ送られなければ」サーチ効果を発動できない挙動に変更(※)されています。
(※ちなみに、例によってこの裁定変更も公式による告知はされていません。当時のジャンプ書籍などにコラム的に情報が記載されることはありましたが、大会等のイベントで人づてに知るなど、プレイヤー間での知識共有が主な情報入手手段でした)
これにより「天使の施し」で捨ててサーチするコンボが成立しなくなり、その利便性を大きく損なってしまうことになりました。
ビートダウンを主軸とする【グッドスタッフ】にとってはカバーできる弱体化ですが、デッキの回転速度を重視する【エクゾディア】にとっては致命的な弱体化です。事実上メインエンジンを喪失してしまう格好となり、更なる失速は免れませんでした。
エクゾディアの崩壊
結論として、【エクゾディア】はこの改訂により大幅に力を落とすことになりました。
デッキの根幹部分は生きているため、この改訂以降も【エクゾディア】を組むこと自体は可能でしたが、全盛期からは程遠いデッキパワーに落ち着いています。決着までに何ターンもかけて少しずつパーツを集めるケースが大半となり、先攻ワンキルは机上の空論に近い話になりました。
このように、当時の改訂では【エクゾディア】を中心とした規制が行われました。
しかし、それだけを意識した改訂ではなく、【エクゾディア】襲来以前に活躍していた「心変わり」を始めとして、早くも「聖なるバリア -ミラーフォース-」が制限カードに指定されるなど、ある程度は【グッドスタッフ】を睨んだ規制も含まれています。
これに関しては【エクゾディア】弱体化後を見据えた規制に近く、事実第2期突入以降の環境では必須カードとして活躍していくことになります。
また、規制強化だけでなく規制緩和も行われており、この時は「落とし穴」が一気に無制限カードに緩和されました。
とはいえ、この時期はライバルが増えたことから「落とし穴」自体も採用率を落としており、それほど大きな影響はなかったと記憶しています。カードプールの増加によってかつての強カードが相対的に評価を落としていった一例であり、そしてそれは遊戯王OCGというカードゲームが成長を続けているという証でもあったのかもしれません。
【当時の環境 2000年4月1日】
【エクゾディア】の弱体化により、当時の環境問題については一応の解決を見せる形となりました。
これにより【グッドスタッフ】が息を吹き返し、遊戯王OCGは徐々にカードゲームとしての健全さを取り戻していきます。この回復にはドローソースの規制も大きく関係しており、ドローの連鎖ゲームが格段に起こりにくくなったことから、真っ当なアドバンテージ・ゲームが成立しやすくなりました。
また、全体的に環境が低速化したことで、これまでは【グッドスタッフ】においても居場所の無かったカードにも活躍の機会が訪れるようになります。
その筆頭は間違いなく「ペンギン・ソルジャー」でしょう。
「ペンギン・ソルジャー」の表示が表になった時、フィールド上のモンスターカード2枚を持ち主の手札に戻す。
1999年12月1日、「BOOSTER6」に収録されていたカードです。
最初期に活躍した「ハネハネ」と同様のバウンス効果を持つリバースモンスターであり、その上位互換となっています。手札に戻すという性質上、直接的にアドバンテージを取れる効果ではありませんが、2体のモンスターをバウンスできるという点が強力です。
単純にテンポ・アドバンテージを稼ぐ使い方はもちろん、自分のモンスターを手札に戻して効果を再利用する使い方も強く、特にこれ自身を戻して再びセットする動きはかなりの制圧力を持っていました。
もちろん、この時期に浮上したカードは「ペンギン・ソルジャー」だけではなく、以前の記事で取り上げた「ダーク・エルフ」や「地雷蜘蛛」などのアタッカー、「異次元の戦士」や「ドリーム・ピエロ」などの除去能力持ちモンスターと選択肢は選り取り見取りであり、自分好みの【グッドスタッフ】を構築する楽しみが出てきた時代です。
私の場合、最初の内は「ペンギン・ソルジャー」や「ドリーム・ピエロ」を「光の護封剣」「和睦の使者」などで守ってコントロールするタイプの【グッドスタッフ】を組んでいましたが、最終的に「ダーク・エルフ」や「異次元の戦士」を中心に除去カードで固めた攻撃特化の【グッドスタッフ】に変わっていました。
「変にコンボを狙うより、単体で強いカードを2枚使った方が強い」という持論が生まれた瞬間です。
【まとめ】
2000年4月1日の制限改訂によって起きた環境の変化については以上です。
【エクゾディア】が弱体化したことで【グッドスタッフ】が勢力を盛り返す格好となり、遊戯王OCGは無事カードゲームとしての姿を取り戻すことができました。
意外なことに、弱体化した【エクゾディア】をあえて使うプレイヤーも少なくなかったと記憶しています。速度が低下したことから防御に意識を割く必要が生まれ、結果的にほどよいバランスのコンボデッキとして環境に居場所を見出した形となります。
プレイヤー側の意識としても、【グッドスタッフ】側は勝機を持ってデュエルに臨める、【エクゾディア】側は大手を振ってデッキを使える、と、どちらにとっても丸い結末に収まることとなりました。
そして、遊戯王OCGの第1期の歴史は以上となります。長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。
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