制限改訂2002/5/1 第2期が迎えた結末 成金ゴブリンすら制限に
【前書き】
【第2期の歴史45 首領・ザルーグ参戦 【トマハン】の成立】の続きとなります。ご注意ください。
「Pharaonic Guardian -王家の守護者-」が販売されたことにより、崩壊しつつあった遊戯王OCGのゲームバランスは完全に失われてしまうことになりました。【八汰ロック】と【先攻1キル】が猛威を振るう中、「無謀な欲張り」や「太陽の書」の参戦によって【現世と冥界の逆転】の台頭を招いてしまい、風前の灯が跡形もなく吹き飛んでしまった形です。
ほとんど末期的とすら言える光景が広がる状況を前に、遂にコナミの裁きが下されます。
【制限改訂 2002年5月1日】
2002年5月1日、遊戯王OCGにおいて10回目となる制限改訂が行われました。
制限カードに指定されたカードは以下の43枚です。
お注射天使リリー | 無制限 |
---|---|
黒き森のウィッチ(エラッタ前) | 準 |
処刑人-マキュラ(エラッタ前) | 無制限 |
ドル・ドラ | 無制限 |
ならず者傭兵部隊 | 無制限 |
ニュート | 無制限 |
メタモルポット | 無制限 |
いたずら好きな双子悪魔 | 準 |
大嵐 | 準 |
手札抹殺 | 無制限 |
成金ゴブリン | 無制限 |
早すぎた埋葬 | 無制限 |
光の護封剣 | 準 |
現世と冥界の逆転(エラッタ前) | 無制限 |
無謀な欲張り | 無制限 |
サイバーポッド | - |
---|---|
人造人間-サイコ・ショッカー | - |
ファイバーポッド | - |
封印されしエクゾディア | - |
封印されし者の左足 | - |
封印されし者の左腕 | - |
封印されし者の右足 | - |
封印されし者の右腕 | - |
八汰烏 | - |
押収 | - |
苦渋の選択 | - |
強引な番兵 | - |
強奪 | - |
強欲な壺 | - |
心変わり | - |
サンダー・ボルト | - |
死者蘇生 | - |
団結の力 | - |
ハーピィの羽根帚 | - |
ブラック・ホール | - |
魔導師の力 | - |
リミッター解除 | - |
王宮の勅命(エラッタ前) | - |
聖なるバリア -ミラーフォース- | - |
停戦協定 | - |
破壊輪(エラッタ前) | - |
魔法の筒 | - |
リビングデッドの呼び声 | - |
準制限カードに指定されたカードは以下の10枚です。
守護者スフィンクス | 無制限 |
---|---|
切り込み隊長 | 無制限 |
増援 | 無制限 |
カオスポッド | - |
---|---|
クリッター(エラッタ前) | - |
天使の施し | - |
フォース | - |
抹殺の使徒 | - |
補充要員 | - |
ラストバトル! | - |
無制限カードに緩和されたカードはありません。
以上が当時コナミから下された裁断となります。変動なんと18枚であり、さらにその全てが規制強化という、数ある制限改訂の中でも稀に見る厳しい対応です。
【現世と冥界の逆転】に対する規制
もちろん、最大の規制の的とされたのは【現世と冥界の逆転】でした。
キーカードである「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」「現世と冥界の逆転(エラッタ前)」を皮切りに、「無謀な欲張り」「手札抹殺」「成金ゴブリン」「メタモルポット」が全て制限カードに、そして「増援」が準制限カードに指定されました。いずれも前環境では無制限カードだったカードです。
当然【現世と冥界の逆転】においては例外なく3積み確定だったカード達であり、対応としては極めて妥当と言うほかありません。単体ではそれほどカードパワーが高いわけではない「成金ゴブリン」すら規制の対象にされていることから分かるように、それだけドローソースが環境に蔓延していたということであり、もはや根元から断つしかないという判断があったのではないでしょうか。
実際のところ、この重い規制は【現世と冥界の逆転】への対処としては非常に効果的に作用しました。「無謀な欲張り」や「メタモルポット」のコンボはそれぞれ3枚積めるからこそ成立する悪用法であり、ピン挿しでは真価を発揮できないどころか、最悪手札事故の原因にすらなってしまいます。
何より「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」が規制されたことが苦しく、「強欲な瓶」などの優良ドローソースの使い勝手が大幅に悪化しています。これまでのように気軽にドローカードとして撃てる状況は少なくなったため、場合によってはこのギミックを採用しない方がデッキが安定するとさえ言えるでしょう。
加えて「増援」が準制限カード指定を受けていることもダメージとしては無視できません。
本来は戦士族サポートカードですが、【現世と冥界の逆転】においては「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」を迅速に手札に引き込むカードとして悪用されていたため、その巻き添えで規制が入った格好です。純粋な【戦士族】にとってはとばっちりも良いところですが、遊戯王ではよくある出来事として受け入れざるを得ません。
とどめとなったのは、デッキのエンドカードである「現世と冥界の逆転(エラッタ前)」「手札抹殺」に対する規制です。デッキパワーの低下という意味ではもちろんのこと、そもそもデッキコンセプトを成立させること自体に難が出てしまっています。
また、「早すぎた埋葬」「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」の2枚が制限カード指定を受けていることも無関係ではありません。
こちらはどちらかと言うと【宝札エクゾディア】に対する圧力の意図が強い規制ですが、弱体化後の【現世と冥界の逆転】の退路を潰すという意味では当デッキに対する規制でもあります。成立直後の【現世と冥界の逆転】は「生還の宝札」をメインエンジンに据えていたため、その時期の構築に立ち返ることもできなくなったからです。
結論としましては、【現世と冥界の逆転】はデッキとしての完成度を大きく損なうことになり、先攻1キルデッキとしてはほぼ死んだも同然と言えるレベルにまで弱体化してしまうことになりました。
【八汰ロック】に対する規制
次点の規制対象デッキは【八汰ロック】です。
露骨に高いカードパワーを与えられていた「ニュート」を筆頭に、「お注射天使リリー」「ならず者傭兵部隊」「いたずら好きな双子悪魔」「大嵐」といった強力なカードがまとめて規制されています。全て制限カード指定であり、ゲームバランス調整の意図が強く現れた改訂です。
いずれも汎用カードであるため、厳密には【八汰ロック】のみを狙い打った規制ではありません。しかし、当時の環境を見る限りでは事実上【八汰ロック】に対する規制と考えても差し支えはないでしょう。
このうち、最も大きな影響が現れたのはやはり「ニュート」の規制です。性質上、3枚積みが必須となるタイプのモンスターであり、ピン挿しでは効力を発揮し切れません。そのため、アタッカーの水増しに「ブラッド・ヴォルス」を代用するなどの対応が必要となりました。
一方、「お注射天使リリー」「ならず者傭兵部隊」への規制はそれほど大きな影響としては現れていません。元々複数枚積むというよりはピン挿ししておき、サーチャーで必要な時にサーチする使い方が一般的だったからです。
むしろ影響という面では上述の「早すぎた埋葬」「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」に対する規制の方が大きな打撃として刺さっています。特にサーチャーである「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」の制限カード指定はアタッカー、特に「人造人間-サイコ・ショッカー」の取り回しを悪化させてしまった格好です。
これ以降、「人造人間-サイコ・ショッカー」が「ヴァンパイア・ロード」に取って代わられていくことになるのも、この規制が一因となっていたことは間違いないのではないでしょうか。
その他の規制
「ドル・ドラ」が制限カードに指定されたことについても触れておきます。
このカードがフィールド上で破壊され墓地に送られた場合、ターン終了時このカードの攻撃力・守備力は1000になって特殊召喚される。この効果はデュエル中一度しか使用できない。
手段は問わず、これがフィールドで破壊された場合に一度だけ自己再生する効果を持った下級モンスターです。性能そのものは特筆するところはなく、環境で活躍できるようなカードではありません。
しかし、ルール的に処理できない欠陥が存在しており、非常にトラブルを誘発しやすかったという問題を抱えていました。具体的には、「デュエル中一度しか使用できない」という制約が「ドル・ドラ」全体にかかっていなかったことがその原因となります。
つまり複数枚デッキに積んでいる場合はそれぞれ自己再生効果を使用できるため、「既に自己再生効果を使用したかどうかの区別がつかない」という状況が容易に起こり得てしまいます。「カオスポッド」や「ファイバーポッド」でデッキに戻ってしまった場合などはその最もたるシチュエーションでしょう。
実際のところ、この問題の解決には第6期のルール改訂を待つしかなく、それまでは苦肉の策として制限指定を受け続けることとなりました。
それ以外には、「光の護封剣」が制限カードに、「守護者スフィンクス」「切り込み隊長」の2枚が準制限カードに指定されたことも変化の一つとして挙げられます。
いずれも優秀なカードではありますが、上記項目で取り上げたカード群に比べれば影響力は低く、これによる変化は軽微にとどまりました。
【当時の環境 2002年5月1日】
【現世と冥界の逆転】を筆頭に、多くの先攻1キルデッキが厳しい規制で力を削がれています。
ドローソース全般の規制、蘇生カードの規制による間接的な「生還の宝札」の弱体化など、かなり念入りにコンボパーツを潰された形です。先攻1キルが成功しなくなったわけではありませんでしたが、安定性を大きく損なったことは否めず、そうしたデッキを環境で見かけることは少なくなっていきました。
また、汎用カードに対する規制により、【八汰ロック】を中心にビートダウンデッキが順当に弱体化しています。
特に「ニュート」との遭遇率が下がったことが大きく、この影響で「ヴァンパイア・ロード」の信頼性が一気に向上しています。「ピラミッド・タートル」とのコンボも知名度を上げ始めており、これ以降は上級モンスターの代表として花開くことになりました。
その一方で「人造人間-サイコ・ショッカー」は次第に採用率を落としていっています。
これ自身が制限カードであることに加え、有力なサポートカードである「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」も制限カードになってしまい、効果的に運用することが難しくなったからです。その結果、どの道活用できないのであればいっそ採用しないというプレイヤーも現れてくるようになり、次第にそれが主流の考え方の一つとして浸透していきました。
こうした環境のデフレが図られた影響か、この頃から【トマハン】も流行し始めています。全体的にゲームスピードが下がった影響で「首領・ザルーグ」のアドバンテージ獲得能力を活かしやすくなり、有力なビートコントロールデッキとして存在感を示していった結果です。
総評としましては、大規模な規制によってゲームバランスが整えられたため、先攻1キルとの遭遇率はひとまず落ち着いています。遊戯王OCGはカードゲームとしての体裁をある程度取り戻し、いくつかの綻びを残しつつも第3期を迎えることとなりました。
【まとめ】
2002年5月1日の制限改訂によって起きた環境の変化については以上です。
第2期終盤を荒らし尽くした【現世と冥界の逆転】に厳しい規制が入り、少なくとも「ジャンケンに負けた瞬間にゲームが終わる」という状況からは脱しています。現実的な確率で先攻1キルを狙うことは難しくなった都合から、コンボからコントロール寄りに構築を変化させる型も現れ始めていました。
環境のデフレによる【トマハン】の台頭など、大きな視点での勢力図の動きも起こっています。とはいえ、根本的に危険なカードが環境に蔓延している状況からは抜け出せておらず、前年と比較してゲームバランスが大味化していることは否めません。
肥大化するカードプールという爆弾を抱えながらも、遊戯王OCGは次の時代へと歩を進めていきました。
そして、遊戯王OCGの第2期の歴史は以上となります。長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。
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