首領・ザルーグ参戦 【トマハン】の成立

2018年2月18日

【前書き】

 【第2期の歴史44 無謀な欲張りが極悪カード扱いされていた時代】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【最後の希望 トマトハンデス】

 「悪夢の蜃気楼」や「無謀な欲張り」など、当時の環境に多大な被害をもたらしてしまったカードは決して少なくありません。これが第2期最後のカードプール更新だったという都合もあり、そうした凶悪カードが第2期の行く末を確定させてしまうことになりました。

 しかし、前記事の最後に触れた通り、第3期で花開くことになる優良カードが多数誕生していたのも事実です。

 「スカラベの大群」に代表するサイクル・リバースモンスターや、小型モンスターをシャットアウトする「王虎ワンフー」、セットモンスターキラーの「一刀両断侍」など、様々な実戦級カードが現れています。とりわけ全体バウンス効果を持つ「守護者スフィンクス」は当時としては驚異的な性能であり、次の制限改訂で準制限カードに指定を受けたほどです。

 

ハンデスモンスターの代表 首領・ザルーグ

 そうした優良カードの中でも特に目を引いていたのは、「首領・ザルーグ」という下級モンスターでしょう。

このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。●相手の手札をランダムに1枚選択して捨てる。●相手のデッキの上から2枚を墓地へ送る。

 相手に戦闘ダメージを与えた時、「ハンデス」か「デッキデス」のうち1つを選んで発動する効果を持っています。「デッキデス」の方はおまけのようなものですが、「ハンデス」効果が非常に強力であることは言うまでもありません。

 戦闘ダメージを与えるだけでアドバンテージを取れるため、理屈の上では戦闘破壊と合わせて2枚分のアドバンテージが得られます。効果の性質上、継続的な手札破壊によって有利な状況を維持しやすいのも魅力です。

 ただし、攻撃力は1400と準アタッカーにも及ばない数値であり、単体で運用するのは厳しい都合もあります。サーチャーを戦闘破壊できる程度の戦闘力は持ち合わせているものの、1900ラインの標準アタッカーにはあっさりと打点負けしてしまいます。

 その場合、このカードを使うことで逆にディスアドバンテージを負ってしまうため、それ以降は苦しいゲームを強いられることになるでしょう。「首領・ザルーグ」が優秀なモンスターであるのは事実ですが、何も考えずにデッキに投入できるタイプのアタッカーではありません。

 こうした事情から、首領・ザルーグ」を最大限活用するために専用デッキの開発が推し進められていき、やがては【トマハン】として花開くことになりました。

 

キラー・トマトとハンデスモンスター

 【トマハン】のキーカードとなったのは、デッキ名にもある通り「キラー・トマト」というリクルーターです。

このカードが戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分のフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚してもよい。その後デッキをシャッフルする。

 2000年7月13日、「Pharaoh’s Servant -ファラオのしもべ-」から生まれたカード群の内の1体です。

 詳しくは上記関連記事で取り上げていますが、この「リクルーター」という概念は現在まで受け継がれており、遊戯王OCGを形作る重要な要素の一つとして浸透しています。

 【トマハン】はそうしたリクルーターを主軸に据えた最初のデッキであり、歴史的な視点においても影響力は小さなものではありません。この時期は【八汰ロック】【現世と冥界の逆転】などの影に押し潰されていましたが、それらの規制が進んだ第3期ではトップメタの一角として活躍していくことになります。

 具体的なデッキの構造は専用ページにて解説する予定ですが、一言でコンセプトをまとめるとキラー・トマト」のリクルートに対応しているモンスターで戦うデッキです。「首領・ザルーグ」はその筆頭であり、ある意味では「キラー・トマト」以上に【トマハン】というデッキを象徴していたのではないでしょうか。

 ちなみに、この【トマハン】の流行には「Pharaonic Guardian -王家の守護者-」と同日発売の「STRUCTURE DECK-ペガサス・J・クロフォード編-」で「キラー・トマト」が再録されていたことも関係していたものと思われます。上記の引用文はその再録時のテキストです。

 同ストラクチャーデッキにはハンデス効果を持つ「トゥーン・ヂェミナイ・エルフ」が新規収録されていたこともあり、海馬ストラクに勝るとも劣らない高い人気を誇っていました。

 もっとも、【トマハン】の構築が時間と共に洗練されていくにつれ、最終的には「トゥーン・ヂェミナイ・エルフ」は使われなくなってしまうのですが……。

 

ピラミッド・タートル リクルーターラインの革命

 また、次世代のリクルーターとも言える「ピラミッド・タートル」が現れたのもこの時です。

このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体をフィールド上に特殊召喚してもよい。

 「キラー・トマト」と同様、戦闘破壊された時に後続モンスターを展開する効果を持っています。しかし、こちらは属性指定ではなく種族指定であり、さらに攻撃力ではなく守備力を参照している点が特徴です。

 条件も2000以下と非常に範囲が広く、元々メインデッキに入らない融合モンスターを除外すれば、なんと「スカルライダー」「不死王リッチー」「砂塵の悪霊」の3体を除き、全てのアンデット族モンスターに対応していました。それぞれ儀式モンスター、特殊召喚モンスター、スピリットモンスターであることを考慮すれば、実質全てに対応していたと言っても過言ではありません。

 とはいえ、この時期はカードプールもそれほど育っておらず、真価を発揮し切れない状況にあったのは事実です。しかし、そんな当時ですら極めて強烈なコンボが潜んでいたことは見過ごすわけにはいきません。

 「ヴァンパイア・ロード」です。

 相手の効果で破壊された場合、次の自分スタンバイフェイズに自己再生する効果を持つ上級モンスターです。総合的な評価では「人造人間-サイコ・ショッカー」に及ばないものの、逆に言えば1強クラスのモンスターと比較対象にされるほどのカードパワーは持ち合わせています。

 流石にそれほどのモンスターがリクルーターから飛び出してくるというのは強烈の一言であり、これまでの一歩及ばないという評価から抜け出し、次第に環境で頭角を現していくことになりました。

 

【当時の環境 2002年3月21日】

 【第2期の歴史43 悪夢の蜃気楼 全てのデッキが4ドローを標準搭載する末期世界】以降の前中後編の記事内容を総括した項目となっています。ご注意ください。

 「悪夢の蜃気楼」と「サイクロン」によるドローコンボが発見されたことにより、【八汰ロック】などのビートダウンデッキを中心に必須ギミックとして大流行しました。その鍵となったのは「サイクロン」の存在で、このギミックのコンボパーツであると共に、相手の「悪夢の蜃気楼」を止める重要なメタカードでもあったからです。

 これを搭載していなければ一方的に相手にメリットを享受されてしまう以上、実質的には積まないという選択肢が存在しない状況でした。

 また、「ピラミッド・タートル」の影響で「ヴァンパイア・ロード」が有力な上級アタッカーとして浮上しています。場持ちの良さ、展開の容易さから上級モンスターにもかかわらず3積みされるケースすら珍しくなかったほどです。

 構築によっては【八汰ロック】に上記のギミックを取り入れるケースも多く、最終的には「人造人間-サイコ・ショッカー」をも上回る採用率を誇るようになりました。

 一方、無謀な欲張り」が与えた被害は極めて甚大で、先攻1キルデッキ、とりわけ【現世と冥界の逆転】を大幅に加速させてしまっています。「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」の力を最も引き出せる存在であり、【現世と冥界の逆転】を環境トップに押し上げた張本人と言っても過言ではないでしょう。

 メタモルポット」らを先攻1キルの尖兵に堕としてしまった「太陽の書も戦犯としては見過ごせません。考え方によっては「無謀な欲張り」以上の悪影響を及ぼしていたとすら言える凶悪なコンボパーツです。

 その他には、「首領・ザルーグ」の誕生を受けて【トマハン】の理念がおぼろげに浮かび上がってきています。しかし、上述の環境では到底日の目を見られる状況ではなく、第2期の間はそれほど目立った活躍はしていませんでした。

 総評としましては、【八汰ロック】が順当に強化を重ねる一方、【現世と冥界の逆転】が頭一つ抜けたデッキパワーを獲得するに至っている印象です。先攻1キル率は体感で8割越えであり、純粋な実力は【エクゾディア】(第1期)にすら匹敵します。

 「サイバーポッド」「メタモルポット」などの強力なリバースモンスターを採用している都合上、先攻1キルが狙えない初手であってもリカバリーが利きやすいことも大きな優位点に含まれるでしょう。これにより、先攻1キルデッキの主な負け筋である「ハンデスやカウンターを連打されて身動きが取れなくなる」ことに対して一定の耐性がついている格好です。

 ただし、当デッキの仮想敵となる【八汰ロック】も極めて凶悪なデッキである以上、これですら【エクゾディア】(第1期)ほどの完全な1強環境には至っていません。この時代を暗黒期として扱うことに否定の余地はありませんが、相対的には第1期終盤時ほどの末期環境ではなかったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 前記事、前々記事と合わせて、「Pharaonic Guardian -王家の守護者-」販売によって起こった出来事は以上となります。

 一言でまとめれば最悪の事態であり、カードゲームとして致命的な問題を抱えていることは明らかです。もはや細かな調整で軌道修正が可能な次元の話ではなく、制限改訂による根本的な治療が必要なことは言うまでもありません。

 遊戯王OCGはゲーム性の大部分が先攻1キルの脅威で塗り潰されてしまうことになり、複雑なジャンケンができるカードゲームとして第2期最後の1ヶ月半を駆け抜けていきました。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史