【旋風BF】トップメタへ 【インフェルニティ】との2強環境
【前書き】
【第6期の歴史34 制限改訂2010/3 【ライトロード】環境の終わり】の続きとなります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【旋風BF】全盛期再び 2010年環境の覇者
2010年3月の改訂によって最大の飛躍を遂げたのは、前期環境からの続投組である【旋風BF】でした。
これまでメタゲームの中心にあった【ライトロード】とその派生デッキが衰退したことを受けての躍進であり、デッキパワーを落とさなかったということが相対的な加速要素になった結果です。さらに、【旋風BF】自体が【インフェルニティ】に対して有利を取れる(※)ことが判明したということもあり、以降の環境ではトップメタの筆頭として名を馳せていくことになります。
(※理由については後述します)
一応、【旋風BF】以外にも【剣闘獣】や【魔轟神】など、同じく制限改訂による規制を免れた既存勢力は存在していたのですが、複数の要因によりこれらが勢いを増すことはありませんでした。
具体的には、【剣闘獣】は前期環境では【次元剣闘獣】として、つまり【ライトロード】のメタとして流行していた側面が強く、実質的には【次元エアトス】などと系統を同じくする【メタビート】の位置付けにあった存在です。そのため、純粋なデッキパワーに関しては主流デッキ並とは言い難い部分もあり、速度という意味でも新環境で戦えるほどの速さは持っていなかったことは否定できません。
もちろん、墓地メタデッキとして振る舞える以上は【インフェルニティ】に対して少なからず有利を取れたのは確かですが、逆に【旋風BF】に対しては効力がほとんど期待できなかったことも事実です。よって【剣闘獣】はこうした板挟みの状況に対応し切れず、やがては淘汰されてしまったというのが大まかな事の経緯となります。
一方、【魔轟神】はデッキパワーについては【剣闘獣】ほど苦しかったわけではありませんが、代わりに「D.D.クロウ」や「異次元への隙間」を筆頭とする各種墓地メタ、「ライオウ」などのサーチメタ・シンクロメタ、「魔轟神レイジオン」を潰してくる「エフェクト・ヴェーラー」など、これ以降の環境で【インフェルニティ】対策として流行するメタカードが例外なく刺さってしまうという致命的な弱みを抱えていました。
そのため、メタゲームにおいてはかなり厳しいハンデがあったことは否めず、やはり環境上位には踏みとどまれなかったというのが現実です。
【インフェルニティ】に対するメタデッキとしての側面
ともあれ、続投組の中では【旋風BF】が唯一の生き残りだったというのは上述の通りですが、その躍進がデッキパワーの高さだけで成り立っていたわけではありません。
当時の【旋風BF】が最終的に環境トップへと至った背景には、何より【インフェルニティ】のメタデッキとしても極めて有力だったことが理由として存在します。
メインから3積みされている「ゴッドバードアタック」はもちろんのこと、そのコストとしても潰しが効く「D.D.クロウ」をメインから積みやすいという利点は【インフェルニティ】環境においては非常に大きな強みでした。他のデッキでは腐りやすさから枚数を減らす、もしくは完全にサイドに下げざるを得ないケースは少なくありませんでしたが、【旋風BF】では半ばメインパーツのような感覚で無理なく採用することができます。
また、全体的にデッキスペースに余裕があることも追い風として働き、その枠に各種メタカードを自由に搭載できる対応力の高さも躍進の後押しとなっていました。中でも最も多用されていたのが「月の書」であり、ミラーマッチ対策を兼ねた汎用妨害札として3積みされることも少なくなかったほどです。
それ以外には、「ライオウ」「王宮の弾圧」などの強力な特殊召喚メタカードや、珍しいところでは「スキルドレイン」「群雄割拠」などの永続罠が採用される型もありました。他の主流デッキと比べてかなり【メタビート】要素が濃い構成が取られており、実際デッキコンセプトの何割かが【メタビート】に寄せられていたことは間違いありません。
言い換えれば、【メタビート】の理想形の一つである「素のデッキパワーが高いメタデッキ」という構想を実現させていたということでもあり、それこそが【旋風BF】が当時の環境の頂点に立つことができた理由だったのではないでしょうか。
スノーマンイーターの流行 シュラ対策の筆頭
こうした【旋風BF】全盛期の到来を受け、以降のトーナメントシーンで使われるカードにも次第に変化が生じていっています。
中でも評価を急上昇させたのが「スノーマンイーター」であり、間もなくBF環境における筆頭カードの1枚に名を連ねるようになりました。
星3/水属性/水族/攻撃力0/守備力1900
このカードがリバースした時、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。
リバース時に表側表示限定のモンスター除去が強制発動するという、現在の価値観ではあまりピンと来ないカードです。というより、そもそも2010年当時の基準でも特別強いカードに見られていたわけではなく、実際参入当初はトーナメントレベルではそれほど注目されない状況に置かれていました。
しかし、【旋風BF】を仮想敵に見据えた上での準汎用カード枠としては中々に有用であり、とりわけ「BF-蒼炎のシュラ」を意識したカードとしては高い効力を発揮します。1900という守備力によって攻撃を受け流しつつ、除去効果で確実に0:1交換を取れるというのは下級モンスターの仕事としては非常に破格です。
もちろん、「BF-月影のカルート」を使われた場合などは突破されてしまいますが、その場合リクルート効果は不発に終わり、またカード・アドバンテージ的にも1:2交換となるため損はしていません。総じて【旋風BF】のビートダウン戦略の出鼻を挫くカードとしてはかなりの効果が望め、下級を積める枠があるなら一度は採用を検討すべきと言われていたほどの1枚です。
その他、過去の環境においても流行していた「墓守の偵察者」「墓守の番兵」などの【墓守】出張ギミックに声がかかるケースもありましたが、やはり直接的に対処できる「スノーマンイーター」の方がより環境に噛み合っていたため、最終的にはこちらが主流になっています。【光デュアル】などの【メタビート】ではもちろん(※)、時には【インフェルニティ】などのトップデッキですらメインから複数積みされるケースは少なくなく、かつてのマイナーカードという評価は完全に払拭していました。
(※逆に【メタビート】で多用される各種1900族も受け流せるため、【メタビート】の必須カードでありながらその対策としても使われていたカードです)
いずれにしても、この時代こそが「スノーマンイーター」が最も輝いていた時代だったことは疑いようもなく、環境の変化により過去のカードが再評価されたことの好例と言えるでしょう。
【まとめ】
前記事と合わせて、2010年3月の改訂で起こった大まかな出来事は以上となります。
これまでトップメタを務めていた【ライトロード】系デッキの衰退、そしてそれによる【インフェルニティ】【旋風BF】の2強環境の到来など、環境トップを取り巻く状況を大きく変動させた改訂です。アニメ出身カテゴリ2種が広い範囲でメタゲームを支配している構図であり、これまでのOCGの常識を塗り替えるような環境が訪れていました。
それ以外にも細かな部分で様々な変化が生じており、この時の改訂が引き起こした出来事は少なくありません。まさに以前までの環境を一新するような大胆な調整であり、時代の変わり目にふさわしい激動の制限改訂だったのではないでしょうか。
そして、遊戯王OCGの第6期の歴史はここまでで以上となります。長時間記事にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
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