鬼畜モグラ N・グラン・モール誕生 僅か3ヶ月半で規制

2018年11月26日

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【前書き】

 【第5期の歴史12 「光と闇の竜」参戦 【ライダー】系デッキの成立】の続きになります。ご注意ください。

 書籍同梱カードから「光と闇の竜」が現れたことにより、新たに【ライダー】と呼ばれるアーキタイプが成立しました。

 しかし、当初はその重さ、また環境的に仮想敵が多かったことなどが関係し、真価を発揮できない状況に置かれていたことは否めません。それでも【バブーンライダー】などの型が結果を出すことはありましたが、本格的な参戦は2007年3月以降の話だったと言えるでしょう。

 おおよそ前月の流れを引き継いだ形でメタゲームが展開される中、同月販売のレギュラーパックによって大規模なカードプールの変動が起こります。

 

ストライク・オブ・ネオス 2006年最優良パック

 2006年11月16日、レギュラーパック「STRIKE OF NEOS」が販売されました。新たに60種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは2612種類に増加しています。

 恐らく2006年に販売されたレギュラーパックの中では最もラインナップが豪華なパックで、非常に数多くの優良カードを輩出したことで有名です。手札誘発の墓地メタ代表格「D.D.クロウ」を筆頭に、【暗黒界】の重要なドローソースである「暗黒界の取引」など、現在でも良く知られる顔触れがこの時に参入してきています。

 変わったところでは、【ガジェット】の派生型の一つである【トレガジェ】を成立させた「カードトレーダー」など、意外な実戦級カードの存在も見受けられます。また、最終的には流行に至らなかったものの、「E・HERO エアーマン」のメタとして脚光を浴びた「畳返し」の存在も決して見逃せません。

 その他、環境目線からは遠ざかりますが、下級バニラモンスターの攻撃力ラインを塗り替えた「ジェネティック・ワーウルフ」や、「サイクロン」禁止行きの噂を広めた「ツイスター」といった興味深いカード群も存在します。とりわけ後の環境でトップデッキの一角として名を馳せる【六武衆】の誕生は、当初はそれがファンデッキに過ぎなかったこと含め、特筆すべき事柄のひとつに数えられるのではないでしょうか。

 

グランモール 無敵の戦闘力

 そんな中、即戦力の有力新人としてプレイヤーの注目を集めたのは、記事タイトルにもある「N・グラン・モール」でした。

このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わず相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す事ができる。

 見ての通り、自身と戦闘を行うモンスターをお互いにバウンスする効果を持っています。言葉にしてしまえば簡単ですが、実際の強さは見かけの遥か上を行き、第5期当時としては反則的とすら言えるほどの凶悪な疑似除去効果です。

 バウンスという性質上、効果そのものはアドバンテージを生み出しませんが、どんなモンスター相手でもノーコストで手札に戻せる時点で並の性能ではありません。効果の発動タイミングもダメージステップ開始時と妨害を受けにくく、疑似的に無敵の戦闘力を持っているモンスターと考えることもできます。

 もちろん、上級モンスターをバウンスするなど、使用タイミングを意識すればアドバンテージを獲得するのも難しいことではないでしょう。

 しかし、「N・グラン・モール」の真の恐ろしさは除去能力そのものではなく、その除去能力を何度でも再利用できるという点にこそありました。

 上記の通り、このカードのバウンス効果は自身を含め手札に戻すため、その気になれば何度でも繰り返しバウンス効果の発動を狙うことができます。当時のカードプールでこのバウンスに素で耐性を持つモンスターは「死霊騎士デスカリバー・ナイト」程度しか存在せず、そしてそれですら1:1交換を取られてしまう始末です。

 モンスターカードの枠組みを外れれば、「ダスト・シュート」や「マインドクラッシュ」などのハンデスカードが対処札として機能しますが、見てからのハンデスの場合、少なくとも1度は仕事をされてしまうため、やはり回答としては消極的であることは否めません。

 唯一、「炸裂装甲」などの攻撃反応罠であれば後腐れなく処理することもできますが、間の悪いことに当時は【エアブレード】の流行により攻撃反応罠カードが評価を落としており、安易にそれらを積むのも「それはそれでリスクが高い」という板挟みの状況にあったのです。

 

最大の被害者【お触れホルス】 衰退期突入へ

 「N・グラン・モール」の参戦により最大の被害を被ったのは、「ホルスの黒炎竜 LV8」を切り札とする【お触れホルス】でした。

 魔法・罠カードに対しては無類の耐性を発揮する【お触れホルス】ですが、モンスター効果である「N・グラン・モール」のバウンス効果には全く対応できません。効果の発動タイミングの関係上「レベルダウン!?」による回避もできず、消極的な防御札として「エネミーコントローラー」の名前が挙がる程度です。

 いくら「ホルスの黒炎竜 LV8」が最上級モンスターとしては召喚が容易な部類に属しているとはいえ、ただの下級モンスターに対処されてしまうようでは運用もままなりません。それも一度ではなく何度でもバウンスを狙われるとなれば、もはや1枚で完封されかねないと言われても否定はできないでしょう。

 考えようによっては第4期初頭環境よりも遥かに厳しい状況で、「N・グラン・モール」の情報が判明した瞬間に各地で【お触れホルス】使いの悲鳴が上がったとも言われます。

 苦肉の策として、「デビル・フランケン」を採用して速度を上げた【フラホルス】と呼ばれる型も考案されていますが、根本的な不利を跳ねのけるには至っていません。もちろん、この瞬間に突然メタゲームから姿を消してしまったわけではありませんが、これ以降は緩やかに勢力を縮小していった印象です。

 特に「スナイプストーカー」などの強烈な仮想敵が台頭し始める、2007年3月以降はその傾向も一層強まっています。しまいには【お触れホルス】を名乗りながら「ホルスの黒炎竜 LV8」をサイドに下げているリストすら出始めてしまい、もはや何が何だか分からない状況と言うほかありません。

 そのため、非常に残念な話ではありますが、この【お触れホルス】の現役時代も2007年上半期、あるいは後継である【フロフレホルス】を含めても2007年下半期辺りが活動限界だったのではないでしょうか。

 

実は逆風の環境 ピン挿しが主流

 このように、一つのデッキを衰退に追い込んでしまうほどの影響を及ぼした「N・グラン・モール」ですが、当然のことながらこのカードにも弱点と呼べるものは存在していました。

 カードレベルの弱みとしては、やはり一定のテンポロスが発生してしまう点が目立ちます。このカードに召喚権を割いたターンは通常召喚による展開が止まってしまうため、考えなしにこれに頼っていては逆に不利に陥ってしまうのです。

 召喚権を消費する疑似除去と言うと「月読命」が思い浮かびますが、あちらは戦闘破壊や各種カードとのコンボによってアドバンテージを生み出せるのに対し、「N・グラン・モール」はどこまで行ってもバウンスカードとしてしか機能しません。

 とはいえ、これは逆に当時の禁止カードと比較対象にされる程度には高いカードパワーを備えていたということでもあり、弱みというよりもむしろ強みと評価すべき点でしょう。

 「N・グラン・モール」の本当の弱みはメタゲーム的な事情と密接に関係しており、具体的には【サイカリエアゴーズ】と二重の意味で相性が悪かったことが挙げられます。

 バウンス除去という性質上、「N・グラン・モール」は召喚誘発によってメリットを生み出すモンスターに対しては有効に打って出ることができません。【帝】のような上級モンスター相手であれば刺さる可能性もありますが、E・HERO エアーマン」などの下級モンスターには出すだけ無駄、どころか友情コンボにしかならないとも言えます。

 また、「冥府の使者ゴーズ」のような容易に特殊召喚できるモンスターにも弱く、その場合は自分側だけテンポロスを食うことにもなりかねません。同じく、半上級モンスターである「サイバー・ドラゴン」も比較的苦手な相手です。

 こうして名前を並べてみると、いずれも当時の環境における主要モンスターとして名を馳せていたカード群であることが窺えます。言い換えれば、実戦で遭遇するほとんどのモンスターが「N・グラン・モール」の仮想敵で占められていたということであり、「N・グラン・モール」視点では逆風どころの話ではありません。

 それとは逆に、自分が使う「E・HERO エアーマン」と召喚権の面で競合しやすかったことも問題の一つです。実際、「E・HERO エアーマン」に召喚権を優先して回した結果、「N・グラン・モール」を手札で腐らせたままゲームが終わってしまうというケースも散見されました。

 こうした背景により、無制限カード時代である当時であっても「N・グラン・モール」が複数枚積まれるケースは多くはなかったのが実情です。単純に2枚以上引いて嬉しいカードではないということもあり、「クリッター(エラッタ前)」のサーチ先の一つとしてピン挿しするのが主流だったことは否めません。

 しかし、逆に言えばそうした環境の中においてすら「N・グラン・モール」が大きな存在感を放っていたということでもあり、それを裏付けるように直近の改訂では制限カード指定という重い規制を下されています。

 その後は仮想敵が減ったこともあって環境屈指のパワーカードに数えられるまでになり、一時期は禁止カード行きの噂が囁かれることさえありました。その根拠の一つとして、アニメGXの4期オープニングムービーに「N・グラン・モール」だけが映っていなかったことは有名なのではないでしょうか。

 

【中編に続く】

 「N・グラン・モール」についての話は以上となります。

 第5期当時としては明らかに飛び抜けた強さの疑似除去効果を持っており、実際に遊戯王前半期においては屈指の知名度を誇っていたカードです。しかし、参入直後に限ればメタゲーム的に逆風の立ち位置にあったことは否めず、カードパワーの高さが採用率に直結するわけではないという好例を示しています。

 しかし、当パックに収録されていた有望株は「N・グラン・モール」だけではありません。現在の価値観ではそれほど目を引かない性能ですが、環境レベルでの活躍もあった意外なパワーカードにも触れておく必要があるでしょう。

 中編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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