止まらないエクゾディア ミラフォが見向きもされない環境

2017年12月21日

【前書き】

 【第1期の歴史20 遊戯王の歴史 1999年の総括】の続きとなります。ご注意ください。

 初年度となる1999年が終了し、遊戯王OCGの歴史は新しい年を迎える形となりました。

 しかしながら、年末から暴れ始めた【エクゾディア】の勢いは衰えるどころか更に増していき、ミラーマッチを見据えて構築がより一層洗練されていきます。

 もはや【グッドスタッフ】を含むあらゆるデッキは仮想敵にすらならず、相手の【エクゾディア】よりも速い【エクゾディア】を組むことこそがゲームの至上目的となっていました。

 

【当時の環境 2000年1月27日】

 2000年1月27日、「Vol」シリーズ最終弾となる「Vol.7」が販売され、新たに51種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは676種類となり、1000種類達成までの道のりの2/3を踏破する形となります。

 シリーズ最終弾にふさわしく、収録内容は比較的豪華となっていました。方向性は異なれど優秀なカードが多く、中には長期に渡って環境で活躍したカードもあります。

 しかしながら、当時の環境は【エクゾディア】一色で塗り潰されており、いわゆる「素直に優秀なカード」は全く活躍できないという状況でした。【エクゾディア】に採用できないカードは例外なく環境から弾き出されてしまうため、これらのカードが日を浴びる機会は先に見送られることになります。

 

サンダー・ドラゴン 手札が増えるデッキ圧縮

 唯一当時の環境に立ち位置を見出せたカードに、「サンダー・ドラゴン」が存在します。

自分のメインフェイズで、手札からこのカードを捨て、デッキから別の「サンダー・ドラゴン」を2枚まで手札に加える事ができる。

 素のステータスはレベル5、攻撃力1600、守備力1500と並以下の性能のモンスターですが、手札からこれ自身を捨てて同名カードを2枚までサーチする効果を持っています。

 手札が1枚増えるとはいえ、戦力として期待できる性能ではありません。基本的には他の目的で採用されるカードです。

 単純にアドバンテージを取れる点に着目され、手札コストに使われるのが一つ。あるいは、墓地にモンスターを溜める目的でデッキに入れられる(※)ことも少なくありません。

(※代表的な採用先としては、【宝札エクゾディア】などの蘇生ギミックを含む先攻1キルデッキや、【雑貨貪欲ターボ】などの墓地肥やし系デッキが挙げられます)

 また、「双頭の雷龍」の融合素材でもあるため、【融合召喚】に採用されるケースもあります。むしろ当時においてはカードプールの関係で必須級のカードとして見られており、潤滑油と融合素材を兼ねるキーカードとして活躍していました。

 しかしながら、この時の【エクゾディア】においては、単に扱いやすいデッキ圧縮カードとしてスポットライトが当たりました。

 当時は少しでもエクゾディアの完成を早めるためにあらゆる方法が模索されており、手軽にデッキ圧縮が行えるこのカードは非常に重宝されました。手札の枚数が増える点も「天使の施し」と好相性で、すぐさまデッキにフル投入されていく格好となります。

 シチュエーションによってはサーチャーを生け贄として墓地に送る目的、あるいは「遺言状(エラッタ前)」の効果適用条件を満たす目的で使われるなど、本来想定されていない使い方をされることも少なくありませんでした。

 恐らくは「デーモンの召喚」と同程度に使われたと思われる、第1期を代表する上級モンスターです。

 

【輝けなかったパワーカード達】

 この時期に活躍したカードではありませんが、当時生まれた優秀なカードについて少し触れておきます。

 

逆転フラグ 聖なるバリア -ミラーフォース-

 まずは、何と言っても「聖なるバリア -ミラーフォース-」です。

相手がモンスターで攻撃した時、相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する。発動後、このカードを破壊する。

 遊戯王を象徴するカードの1枚であり、アニメにおいては逆転フラグの代名詞でもあります。相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃表示となっている相手モンスターを全滅させる強力な効果を持っていました。

 そのカード名から「ミラフォ」「ミラバリ」といった複数の愛称を与えられているカードです。遊戯王OCG史上初の攻撃反応型罠カードにして当時最高峰の除去カードであり、非常に長い間環境の第一線で活躍し続けていました。

 攻撃反応型罠カードとしてあまりにも有名だったことから、総攻撃をかける際にも1体は守備表示のモンスターを残しておくなど、このカードの存在自体がプレイヤーの行動を抑制するほどの影響力を持っていたカードです。

 現在では環境が高速化したこと、またライバルが増加したことなどから一線級の存在ではなくなりましたが、今なおこのカードの印象が強く残っているプレイヤーも少なくないのではないでしょうか。

 あまり語っていると話が逸れてしまうため、この辺りで切らせていただきますが、とにかく遊戯王OCGというカードゲームの中で強い存在感を示し続けたカードであることは疑いようもありません。制限改訂による【エクゾディア】の衰退以降は、【グッドスタッフ】に限らず多くのデッキに採用される必須カードとして名を馳せていく形となりました。

 

元祖デメリットアタッカー ダーク・エルフ

 「聖なるバリア -ミラーフォース-」と比べると小粒ではありますが、「ヂェミナイ・エルフ」などとは異なる方向性で優秀な下級アタッカーもこの時に誕生しています。

 1枚目は「ダーク・エルフ」です。

ライフポイントを1000ポイント支払わないと攻撃できない。

 テキストの通り、ライフを支払わなければ攻撃できないというデメリット効果を持っています。これだけでは使うだけ損をするように思えますが、このカードの特徴は下級モンスターにして2000もの攻撃力を誇る点にこそありました。

 これは当時最強の下級アタッカーである「ヂェミナイ・エルフ」を上回る打点であり、その一点だけでも採用理由に足る利点です。コストもライフのみとアドバンテージを失わず、同型のデメリットアタッカーの中では破格の利便性を持っていました。

 

ゲームから除外 異次元の戦士

 2枚目は「異次元の戦士」です。

このカードを攻撃、又はこのカードの攻撃を受けたモンスターとこのカードはゲームから取り除き、そのデュエル中使用できない。

 このカードと戦闘を行ったモンスターを、これ自身と共に除外する効果を持っています。遊戯王OCG史上初の除外効果持ちのモンスターであり、どんなモンスター相手でもほぼ確実に1:1交換が狙えることから、第3期前半に至るまで下級アタッカーの常連として第一線で活躍し続けました。

 除外効果が強制であるため、使い方を誤ると損をしてしまうという欠点もありましたが、むしろその点が上級プレイヤー達の自負に火をつけたのは言うまでもないことでしょう。

 また、「クリッター(Vol.6)」「黒き森のウィッチ(Vol.6)」などのサーチャーは墓地へ送られなければ効果を発動できないため、それらへの対策としても重宝されています。

 とはいえ、【エクゾディア】全盛期ではサーチャーは手札から捨てられるケースがほとんどです。対策としては力不足は否めず、やはり活躍の機会はありませんでした。

 

【まとめ】

 このように、「Vol.7」は優秀なカードを多数輩出した優良パックとなっていました。

 実際の環境では、上記のいずれのカードも【エクゾディア】に押し潰される形となっていましたが、ポテンシャルの高さは変わらず、制限改訂後の環境では徐々に頭角を現していきます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史