カオスポッド ループ系デッキの開拓者
・前書き
・カオスポッド 盤面がカオスになるカード
・カオポ・メタポ・サイポ3積み時代の【デッキ破壊】
・リバースモンスター専用蘇生カード 浅すぎた墓穴
・【デッキ破壊】への有力なメタカード達
・抹殺の使徒 対リバースモンスター最終兵器
・停戦協定(大嘘)
・そして制限カード行きに カオスループ半壊
・マッチキルパーツとしても活躍 【MCV】ループの中核
・後編に続く
【前書き】
【第2期の歴史14 サイコショッカーが最強だった時代 リビデショッカーの脅威】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
カオスポッド 盤面がカオスになるカード
「人造人間-サイコ・ショッカー」「王宮の勅命(エラッタ前)」という強力な新兵器を手に入れ、【グッドスタッフ】はそのデッキパワーを堅実に高めていきました。
しかし、「Curse of Anubis -アヌビスの呪い-」に収録されていたカードは素直な強さを持つカードばかりではなく、普通のデッキには入らない「コンボ色の強い」カードも多数含まれています。
その筆頭は間違いなく「カオスポッド」に他ならないでしょう。
リバース:お互いにフィールド上モンスターカードを持ち主のデッキに加えてシャッフルする。その後デッキに加えた数と同数のモンスターカードが出るまでめくる。それらを裏側守備表示でフィールドに出す。それ以外のカードを墓地に捨てる。
リバース時に色々と複雑な処理が発生する効果を持ったリバースモンスターです。非常に込み入ったテキストが記されていますが、簡単にまとめると以下のようになっています。
①:フィールドのモンスターを全てデッキに戻す。
②:お互いのプレイヤーは、それぞれ自分がデッキに戻した数と同数のモンスターが出るまでデッキをめくる。
③:それらのモンスターを裏側守備表示で特殊召喚(※)し、それ以外のめくられたカードを墓地へ送る。
(※この頃は現在と違い、レベル5以上のモンスターも特殊召喚可能な裁定でした)
リバースするだけでフィールドのモンスターを根こそぎデッキバウンスし、別のモンスターに変えてしまいます。裏側守備表示でセットされるため、バトルフェイズ中であっても追撃を受けることはありません。当時のカードプールには効果耐性持ちのモンスターなども存在していなかったため、リバース効果の発動に成功すればほぼ確実に1ターンを生き残ることが可能でした。
また、この際にめくられた「モンスター以外のカード」は墓地へ送られる処理であり、実質的にデッキ破壊効果を内蔵したモンスターとして見ることもできます。どの程度デッキを削れるかはその時のめくれ方次第ですが、運が良ければ(あるいは悪ければ)10枚近く一気に削れるケースもあり、当時は「何が起こるか分からない爆弾カード」として恐れられていました。
カオポ・メタポ・サイポ3積み時代の【デッキ破壊】
当然、真っ先に「カオスポッド」に注目した勢力は【デッキ破壊】であり、間もなく期待の新人として頭角を現していくことになります。
もちろん、裏側守備表示でモンスターが特殊召喚される関係上、【デッキ破壊】で多用される各種リバースモンスターとも好相性です。この効果で相手ターンにセットしたリバースモンスターを返しのターンでそのまま反転召喚させられるため、まさに攻防一体という言葉が当てはまる活躍が期待できます。
リバース効果を使い終わったリバースモンスターをデッキに戻して再利用する使い方も優秀で、当時の【デッキ破壊】においては「サイバーポッド」「メタモルポット」に次ぐエンジンパーツとしてデッキの土台を支えていました。
中でも「カオスポッド」で更なる「カオスポッド」を引き当てる動きは強烈の一言で、盤面を半ループ状態に持ち込むことでほぼ勝ち確の状況が成立します。何と言っても当時は「カオスポッド」「メタモルポット」「サイバーポッド」の全てが無制限カードという恐ろしい時代であり、とりあえず「カオスポッド」の効果が通れば大抵ループに繋がる(※)ような状況だったからです。
(※現在で言うループとは定義が異なりますが、この頃は「毎ターン同じ動きを繰り返す」ことをループと呼んでいました)
ただし、リバース時に「カオスポッド」の戦闘破壊が確定している場合、その「カオスポッド」はデッキに戻らないので注意が必要です。また、デッキに1体もモンスターを戻さない場合は「デッキをめくる処理」も行われないため、結果的にそのプレイヤーに対しては何の影響も及ぼしません。
逆に言えば、「カオスポッド」をあえて単体で用いることで自分へのデッキ破壊を防ぐことができるため、相手とデッキ枚数差をつけるテクニックとして重宝されました。「ニードルワーム」以来の「相手のデッキだけを削るカード」であり、「サイバーポッド」「メタモルポット」にはこなせない仕事ができる「相互互換カードの立ち位置」を次第に見出されていった格好です。
リバースモンスター専用蘇生カード 浅すぎた墓穴
さらに、【デッキ破壊】を強烈にサポートする新規カードとして、「浅すぎた墓穴」という魔法カードも同パックから誕生していました。
自分と相手はそれぞれの墓地からモンスターカードを1体選び、守備表示でフィールド上にセットする。
当時としては異色の蘇生カードで、任意のモンスターを裏側守備表示で釣り上げる効果を与えられています。ただし、相手にも好きなモンスターを蘇生させてしまうため、単体で使うだけではディスアドバンテージを負ってしまう扱いの難しいカードです。
よって【グッドスタッフ】などのフェアデッキで採用できるタイプのカードではありませんが、相手にアドバンテージを与えても困らない【デッキ破壊】においては事実上デメリットを踏み倒せます。むしろ「カオスポッド」を使う場合は相手のモンスターが多いほど効果的に機能するため、逆にメリットとして捉えることすら可能です。
また、当時は裁定も有利に働いており、現在の「お互いの墓地に蘇生可能なモンスターがいなければ発動できない」裁定とは違い、相手の墓地にモンスターが存在しない場合であってもこのカードを発動することができました。
言い換えれば、先攻1ターン目であっても問題なく使用「できてしまっていた」ことになります。要するにこの裁定の「浅すぎた墓穴」は非常に悪用しやすいカードだったため、【宝札エクゾディア】や【デッキ破壊1キル】などの先攻ワンキルデッキでは常連コンボパーツとして名を馳せていた時期もありました。
とはいえ、この時期は純粋に優秀な蘇生カードとして見られており、リバースモンスター専用の「死者蘇生」として愛用されていたカードです。実際、この「浅すぎた墓穴」を得た【デッキ破壊】はデッキの安定性と粘り強さを大きく向上させており、以前と比べて一段上のデッキパワーを獲得していました。
【デッキ破壊】への有力なメタカード達
しかし、この時の【デッキ破壊】に与えられたものは強力な新兵器だけではありません。勢いづく【デッキ破壊】に歯止めをかけるかの如く、これに対して有効なメタカードが同パックから2枚も現れています。
抹殺の使徒 対リバースモンスター最終兵器
1枚目は「抹殺の使徒」という魔法カードです。
裏側表示のモンスター1体を破壊しゲームから取り除く。もしそれがリバースモンスターだった場合お互いのデッキを確認し、破壊したモンスターと同じカードを全てゲームから取り除く。その後デッキをシャッフルする。
裏側表示のモンスター1体をゲームから除外し、更にそれがリバースモンスターであれば同名カードを根こそぎデッキから取り除きます。「異次元の戦士」に続く「墓地送り以外の除去」であり、多くのプレイヤーが待ち望んでいた有力なリバースモンスターメタカードです。
当時は除外されたカードを再利用する手段はなく、このカードによって除去されたカードは文字通りゲームから取り除かれてしまう格好となっていました。そしてリバースモンスターの場合はデッキの同名カードも含めて除外されてしまうため、リバースモンスターをキーカードに据えているデッキにとっては壊滅的な被害となってしまいます。
リバースモンスターをデッキの主軸としているデッキとは一体何でしょうか?
【デッキ破壊】です。
メインパーツは「サイバーポッド」「メタモルポット」「ニードルワーム」「カオスポッド」と、ものの見事にリバースモンスターが並んでおり、この内のどれを抜かれても痛手となります。1発だけでは致命傷にはならないとはいえ、2発、3発と連打されてしまえばデッキが機能不全を起こしてしまいます。
そもそも、単純にリバースモンスターを裏側表示のまま処理されるというだけでも苦しく、例えば手札0枚の状態で「メタモルポット」を潰されてしまえば立て直しは難しくなるでしょう。従来の定番除去である「死者への手向け」などと違って発動コストも要求されないため、相対的に対戦相手がリスクを負いにくい点も向かい風となっています。
総じて【デッキ破壊】にとっては厳しいカードであり、メタゲームにおける難敵として立ち塞がる形となりました。
もちろん、メタカードではなく単純に除去カードとして見た場合も優秀なカードです。
当時は対処が難しかった裏側表示モンスターを確実に1:1交換で仕留められる上に、これで破壊したモンスターは墓地へ送られずにゲームから除外されるため、「クリッター(エラッタ前)」などのサーチャーを後腐れなく処理することができます。表側表示のモンスターに対しては無力ですが、ゲーム中に一度もモンスターがセットされないシチュエーションは稀であり、基本的に的となるモンスターには困りません。
メタカードとしてデザインされたにもかかわらず極めて腐りにくく、この「抹殺の使徒」は次第にメタカードの域を超えて必須カードに近い立ち位置を確立していきました。将来的には制限カードを経験しているほどであり、名実ともに遊戯王前半期におけるパワーカードの座にあった存在です。
停戦協定(大嘘)
2枚目は「停戦協定」という罠カードです。
裏側守備表示のモンスターを全て表にする。この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。フィールド上の効果モンスターの数だけ500ポイントのダメージを相手ライフに与える。
効果がやや分かりにくいため、以下に内容を纏めます。
①:セットされている全てのモンスターを表側表示にする(この際、リバース効果は発動しない)。
②:フィールドの「効果モンスター」の数×500ダメージを相手に与える。
裏側守備表示のモンスターを「リバース効果を発動させないまま」表側表示にし、更にダメージまで与える強力な罠カードです。フィールドの全てのモンスターに影響が及ぶため、これ1枚で複数のリバースモンスターに同時に対処できる強みがありました。
間違いやすい部分ですが、発動しないのは「リバース効果」で、カウントするのは「効果モンスター」です。リバースモンスターメタカードという点が誤解を招きやすいのか、当時はこの部分がよく混同されていました。
【デッキ破壊】へのメタカードとして見た場合、上記の「抹殺の使徒」に負けず劣らずの活躍が期待できます。
【デッキ破壊】とのゲームでは「サイバーポッド」や「カオスポッド」などによって、複数のリバースモンスターが同時にセットされるシチュエーションも珍しくありません。そうした場面では「抹殺の使徒」1枚では手が回り切りませんが、「停戦協定」であればスマートに問題を解決できます。
リバースモンスターが大量に並んでいる場合、追加のバーンダメージも非常に大きな数値が狙えます。状況によってはこれが引導火力となるケースも多く、【デッキ破壊】はこのカードの対策に頭を悩ませることになりました。
しかしながら、カード単体で性能を見た場合、やや扱いにくさが目立つカードでもあります。
このカードで行えることは「セットモンスターを表側表示にすること」と「バーンダメージを与えること」の2点だけであり、単体ではアドバンテージを取れません。最悪でもダメージにはなるため完全に腐るわけではありませんが、こうした目先のダメージは価値が薄く、カード1枚使ってまでやることではないというのは事実です。
そのため、「抹殺の使徒」とは異なり必須カードに格上げされることはなく、あくまでもメタカードの枠内に収まる形となりました。とはいえ上述の通りメタカードとしては非常に優秀で、【デッキ破壊】対策として多くのデッキに投入された実績のあるカードです。
そして制限カード行きに カオスループ半壊
以上のように、「カオスポッド」の参戦は当時の環境に多大な影響をもたらしました。
もちろん、同じタイミングで優秀なメタカード2種が現れており、それによって【グッドスタッフ】と【デッキ破壊】の格差が縮まったことは事実です。しかし、根本的に「カオスポッド」の存在がゲームバランスの悪化を招いている面があったことは否めません。
その結果、2000年11月の制限改訂では「カオスポッド」が一気に制限カード指定を下されることになります。誕生から僅か1ヶ月での制限カード行き(※)であり、それだけ当時の環境における「カオスポッド」の脅威が大きかったことが窺えます。
(※また、同じタイミングで「サイバーポッド」も制限行きになっています)
その後は第2期中頃に準制限カードに復帰していますが、そこから無制限カードに釈放されるまでには4年近くもかかるなど、しばらくは危険性の高いコンボパーツとして警戒される状況が続いていました。実際、海外環境では制限を通り越して禁止カードに指定されているほどであり、国内では目立たないながらも密かに危険な空気を放っている存在です。
マッチキルパーツとしても活躍 【MCV】ループの中核
第2期時点における「カオスポッド」については以上ですが、補足として第2期以降の「カオスポッド」の動向についても触れておきます。
よく知られている話ですが、「カオスポッド」は非常にループ系のコンボを組みやすいカードです。上述のように【デッキ破壊】などで普通に使っても勝手に疑似ループが成立してしまうほどであり、他のカードとの組み合わせによっては無限ループ(※)を構築することもできます。
(※通常の無限ループはもちろん、ルール上誰にも止められない完全無限ループを組むことも可能です)
中でも有名なのは「召喚制限-猛突するモンスター」を利用した【カオスループ】と呼ばれるデッキですが、やはり「カオスポッド」最大の実績はマッチキルデッキ【MCV】を成立させたことにあるでしょう。
詳しくは上記関連記事もしくはデッキ個別ページで解説していますが、「カオスポッド」の効果を1ターン中に無限に使用できる状況を整え、最終的に「ヴィクトリー・ドラゴン」によるマッチキルを狙うという非常に凶悪なデッキです。単純な強さ以上に対人問題の引き起こしやすさから恐れられていたデッキであり、【トランス】と同様にゲームの域を超えた場所で脅威を振り撒いていました。
いずれにしても、「カオスポッド」が遊戯王前半期において多くのループコンボの中核を担っていたことは間違いなく、まさにループ系デッキの開拓者とも言える存在だったのではないでしょうか。
【後編に続く】
当時の【デッキ破壊】に絡んだ新規カードについての話は以上です。
「カオスポッド」を筆頭とするサポートカード、及び「抹殺の使者」などのメタカードが同時に現れるという、一言では言い表せない複雑な環境推移となっています。【グッドスタッフ】と【デッキ破壊】のどちらの目線でも難しい展開であり、それぞれがお互いを見据えて対策に追われる格好となりました。
とはいえ、総合的には「カオスポッド」の凶悪さが際立っており、1ヶ月後の制限改訂の結果がそのことを物語っていたと言えるでしょう。
しかし、この激しい首位争いに割り込みをかけるように、とあるデッキが突如台頭してきます。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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