エラッタ前ディスクガイの狂気 永久禁止カードと呼ばれた理由
【前書き】
【第5期の歴史20 実は弱点だらけ? 2007年の【デミスドーザー】全盛期の現実】の続きとなります。ご注意ください。
2007年3月の制限改訂によってメタゲームが揺れ動き、当時の勢力図に大きな変動が発生しました。その中でもトップデッキとして知られていたのは【ガジェット】や【光と闇の竜】ですが、【デミスドーザー】などの地雷デッキも侮れない影響力を発揮しています。
そうした状況に更なる波乱が起きたのは、同月中旬販売のゲーム同梱カードが現れた時のことでした。
D-HERO ディスクガイ 生ける「強欲な壺」
2007年3月15日、ゲームソフト「遊戯王デュエルモンスターズ WORLD CHAMPIONSHIP 2007」と、その攻略本が同時に販売されました。ゲーム同梱カードから3種類、書籍同梱カードから1種類、合計4種類の新規カードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは2712種類に増加しています。
なんと収録カード4枚全てが何らかの形で環境レベルの採用実績を残しており、まさしく少数精鋭という評価が相応しい顔触れです。【帝コントロール】を筆頭とする【生け贄召喚】系デッキのリリース要因、また将来的には【ゼンマイ】などのランク3展開要員として活躍する「マジック・ストライカー」や、【デステニー】系デッキや【Bloo-D】の切り札「D-HERO Bloo-D」、さらには【征竜】のサイドカードとして一時期脚光を浴びた「ボマー・ドラゴン」など、名だたる面々が揃い踏みしています。
しかし、その中でも飛び抜けて強烈な存在感を示していたのは、まず間違いなく「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」に他なりません。
このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
エラッタ前とあるように現在は既に消滅しているデザインで、規制状況にかかわらず二度と使用することができないカードです。おおよそ10年近い期間を禁止カードとして過ごした末のエラッタ復帰であり、その曰くつきの経歴は「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」に勝るとも劣らないものがあります。
効果そのものは非常にシンプルで、自身が墓地から蘇生するたびに2ドローする、というものです。逆に言えばそれ以外の制約はターン1制限含めて一切設けられておらず、その気になればいくらでも悪用できると言っても過言ではありません。
単純に考えても全ての蘇生カードが「強欲な壺」に化けるため、乱暴に表現すれば「生還の宝札」2枚分の働きをするモンスターと言い換えることもできるでしょう。サーチ・リクルートが容易いことを考慮すれば悪用適正はそれ以上であり、純粋な凶悪さという意味では過去の禁止カードの中でも指折りの存在です。
実際、活用方法が今ほど豊富ではなかった第5期当時においてすら調整ミスが疑われていたほどであり、それを裏付けるように直近の改訂(2007/9)では即座に制限カード指定を下されています。
しかし、元々ピン挿しの上で必要な時にサーチするという使い方が主流だったため、制限カード指定を受けた後もその勢いが衰えることはありませんでした。遂には第5期を代表する先攻1キルデッキ【ドグマブレード】のギミックにも組み込まれるなど、その影響力、脅威度は極めて広範囲に及んでいます。
最終的には【レスキューシンクロ】において「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」と「早すぎた埋葬」によるループギミックに悪用されたことが決定打となったためか、2008年9月の制限改訂で禁止カード指定を受けるという結末を迎えることになりました。
その後はエラッタを受けるまで一度も現役復帰していませんが、上述の通り「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」が遊戯王OCGでも屈指の危険物であることは明白です。そのため、仮にエラッタを受けていなかったとしても、復帰の見込みは万に一つもないカードだったことは間違いないでしょう。
【光と闇の竜】からの派生 【ディスクライダー】の成立
とはいえ、「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」もコンボ前提のカードである以上、流石にどんなデッキにも採用できるというわけではありません。
特に、この時期は実用レベルの汎用蘇生カードが「早すぎた埋葬」や「リビングデッドの呼び声」程度しか存在しなかった(どちらも制限カード)ため、しっかりと専用デッキを組まなければ全く真価を発揮できない状況にあったことは事実です。
そうした流れを受け、これを最大限活用することを目的として【ディスクライダー】と呼ばれるデッキが間もなく開発されています。
名前から分かるように【ライダー】系列デッキの一種であり、「光と闇の竜」を切り札に据えた有名なアーキタイプです。直前の改訂で【ライダー】自体が環境トップの一角に浮上していたこともあり注目度は非常に高く、この【ディスクライダー】の雛形が固まったのは同月中のことでした。
コンセプトを一言にまとめるなら「ライダーの蘇生先としてディスクガイを起用したターボデッキ」というもので、驚くべきことにメインはむしろ「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」の方にあるとも言えます。もちろん、「光と闇の竜」が一番のキーカードであることはやはり間違いありませんが、従来の【ライダー】系と比べて若干方角が異なっていることは確かです。
通常、「光と闇の竜」の最大の魅力は「あらゆる効果を無効化する制圧力の高さ」とされており、破壊時のリセット効果及び蘇生効果はどちらかというとデメリットに近い性質を持っています。これは当たり前ですが「光と闇の竜」以上に強いモンスターがほぼ存在しないことが理由で、破壊時のリセット蘇生はあくまでも「ライダーが落とされた場合の保険」にしかなりません。
しかし、ここに「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」を絡めた場合、「光と闇の竜」には「死亡時に2ドロー」という最高の置き土産(※)が残ることになります。つまり、状況によって蘇生効果の強さにムラが出やすい【バブーンライダー】などと違い、確実に2枚分のアドバンテージが転がり込んでくることが約束されているのです。
(※墓地に送られた時に「強欲な壺」をサーチできると考えれば強さが分かりやすいかもしれません)
蘇生した「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」がそのまま次のリリース要因になるのも魅力の一つで、「風帝ライザー」や「炎帝テスタロス」に繋げることで無理なく戦線を維持できます。もちろん、もう1体分の生け贄が確保できるのであれば2体目の「光と闇の竜」を展開し、完全に盤面を制圧してしまうのも難しいことではないでしょう。
こうした【ディスクライダー】の更なる派生型として、「D-HERO ディアボリックガイ」や「デステニー・ドロー」まで取り入れた【デステニーライダー】と呼ばれるデッキも考案されています。ターボデッキとしての速度はこちらが上であり、安定性では劣るものの上手く回った時の爆発力は【ライダー】系デッキの中でも随一です。
いずれにしても、この両デッキが「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」というたった1枚のカードの存在によって成り立っていたことには変わりありません。その意味では、このカードも他の多くの禁止カードと同じく、参入直後の時点から未来の禁止カードに相応しい風格を匂わせていたとも言えるでしょう。
【後編に続く】
「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」についての話は以上となります。
遊戯王OCG全体を見渡しても飛び抜けて狂気的なドロー加速能力を持ち、その挙句に存在すら消滅してしまったほどの極悪カードです。また、その活躍はコンボ界隈にとどまらず、【ライダー】系など健全なビートダウンデッキの範疇においても多くの採用実績を残していました。
しかし、そんな「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」の参入によって引き起こされた出来事はこの記事で触れたものだけではありません。直接の影響という意味では関係性はありませんが、このカードの存在がきっかけとなってとあるデッキが成立するに至っていたのです。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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