BF-大旆のヴァーユ参戦 【墓地BF】の成立

2019年3月21日

【前書き】

 【第6期の歴史18 2009年上半期の「猫天国」 【レスキューシンクロ】全盛期再び】の続きになります。ご注意ください。

 制限改訂によって当時のカードプールに大規模な調整が入り、【シンクロアンデット】【スーパードローライダー】などのトップデッキが環境上位から脱落しました。その後釜に収まったのが【レスキューシンクロ】であり、以降の時代を第2の全盛期として過ごすことになります。

 メタゲームが猫の脅威に包まれていく中、その流れに待ったをかける期待のルーキーが現れたのは4月中旬のことでした。

 

大旆のヴァーユ シンクロ素材にできないチューナー

 2009年4月18日、レギュラーパック「ANCIENT PROPHECY」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは3778種類に増加しています。

 2009年出身パックとしては一、二を争うほどラインナップが豪華なタイトルであり、当時はもちろん、将来的に躍進を遂げる遅咲きのカードも少なくありません。

 しかし、いずれも汎用パワーカードというよりは専用デッキで輝くタイプのカードが多く、例えば禁止カードである「フィッシュボーグ-ガンナー」「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」の2枚もコンボ向けのカードです。

 それ以外にも【炎属性】全般を支える「フレムベル・ヘルドッグ」「真炎の爆発」や、【X-セイバー】の必須カード「XX-セイバー ガトムズ」「XX-セイバー フォルトロール」、あるいは「トゥルース・リインフォース」や「化石調査」など、全体的に特定のデッキをサポートするカード群が目を引きます。例外として、「黒光りするG」のようにメタカードとして広く活躍したカードも現れていましたが、いずれにしても汎用パワーカードという枠組みには当てはまらない面々でしょう。

 とはいえ、優秀なカードが多数収録されていたことに変わりはなく、中でも「BF-大旆のヴァーユ」の存在は一際注目を集めていたのではないでしょうか。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードをシンクロ素材とする事はできない。
このカードが墓地に存在する場合、このカードと墓地に存在するチューナー以外の「BF」と名のついたモンスター1体をゲームから除外し、そのレベルの合計と同じレベルの「BF」と名のついたシンクロモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 【BF】に属するチューナーの1体であり、その中でも極めて異質な特徴を持った規格外のモンスターです。まず真っ先に目につくのは「シンクロ素材にできない」という文言であり、チューナーというカードのコンセプトを完全に無視している(※)ことは言うまでもありません。

(※ただし、効果外テキストではなく永続効果であるため、効果を無効にすることで制約を回避可能です)

 その代わりに墓地の【BF】モンスターを自身とともに除外することで【BF】シンクロを特殊召喚する効果を持っており、実質的には墓地融合ならぬ墓地シンクロを行うようなカードであると言えます。通常のチューナーとは異なる運用を要求される扱いにくさはありますが、墓地リソースを直接ボード・アドバンテージに変換できるというのは当時としては破格です。

 ただし、この方法で特殊召喚した【BF】シンクロは効果が無効化され、さらに蘇生制限を満たせないといったデメリットも存在するため、漠然と使うだけでは真価を発揮できないカードでもあります。

 とはいえ、そもそも比較的容易に0:1交換が成立するというだけでも十二分に優秀であり、また蘇生制限についても「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」に奪われないというメリットにもなり得ます。さらに、効果の性質上「王宮の弾圧」などの一部の特殊召喚メタを無視できるという強みもあり、総合的にはやはり優秀なモンスターと言って差し支えありません。

 実際に当時の【旋風BF】においても有力新人として少なからず注目を受けており、「BF-蒼炎のシュラ」のリクルート候補や「黒い旋風」の後詰め要員としてピン挿し、あるいは型によっては複数枚積まれるケースもありました。

 

【墓地BF】の成立 【ダークモンスター】からの派生

 そんな「BF-大旆のヴァーユ」というモンスターですが、その性質上やはり純構築の【BF】とはやや噛み合わせが悪い(※)というのは確かです。

(※現在ではリンク素材などに流用できますが、この時期の【BF】では「BF-蒼炎のシュラ」からリクルートするか、何らかのコストにする程度しか効率的な処理手段がありませんでした)

 そのため、これ以降は「BF-大旆のヴァーユ」の強みを最大限活用するための専用デッキとして【墓地BF】の開発が進んでいくことになります。

 ただし、【墓地BF】は【BF】の名を冠していることから誤解されがちですが、実態は【ダークモンスター】に近いアーキタイプです。【BF】の代名詞とも言える「黒い旋風」や「BF-蒼炎のシュラ」といったカードも基本的には採用せず、メインデッキの【BF】モンスターは「BF-大旆のヴァーユ」「BF-暁のシロッコ」「BF-疾風のゲイル」の3種に限られるケースが大半でした。

 それ以外のモンスターは「終末の騎士」や「ダーク・グレファー」、また「ネクロ・ガードナー」「ゾンビキャリア」といった【闇属性】の基本的なカード群で占められています。そのため、乱暴にまとめるなら直前に現れていた【ダークアンデット】の【アンデット】要素を【ヴァーユ】ギミックに差し替えたようなデッキだったとも言えるでしょう。

 しかし、その速度や爆発力は【ダークアンデット】の比ではなく、手札によってはあっさりワンキルが決まってしまうケースも少なくありませんでした。なぜなら、この時期は「BF-疾風のゲイル」や「異次元からの埋葬」が無制限、さらには「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」が現役を務めているというとんでもない時代だったからです。

 そのため、変にコントロール軸に寄せるよりもワンキルに特化した方が強いとすら言われており、ある意味では【スーパードローライダー】の後継デッキのような扱いを受けていたと言っても過言ではありません。流石に本家ほどの圧倒的な速さはありませんでしたが、【墓地BF】としては間違いなく全盛期と言っていい時代だったのではないでしょうか。

 とはいえ、その完全体【墓地BF】ですら当時の【レスキューシンクロ】には勝つことができず、終始2番手の立ち位置にあったことは否定できません。

 というのも、やはり【墓地BF】はその構造上カード1枚からは動けないデッキであり、それはワンキル型の当時であっても例外ではなかったからです。デッキを機能させるために下準備にリソースを割かざるを得ない以上、その行程を無視して「レスキューキャット(エラッタ前)」1枚から動いてくる【レスキューシンクロ】にはフットワークの軽快さで劣ってしまい、その格差がそのまま使用率の差に表れてしまったと見るべきでしょう。

 

【墓地BF】の歴史 ワンキル軸からコントロール軸へ

 ちなみに、この【墓地BF】というデッキは初期から末期に至るまでコンセプトが一貫していたわけではなく、時代によって構成が徐々に推移していったという経緯を持ちます。

 上述の通り、2009年3月2009年9月環境では「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を絡めたワンキル特化型が主流でしたが、それ以降はビート・コントロール寄りのデッキに姿を変えていっています。特に「異次元からの埋葬」が制限カードに指定される2010年3月以降はその傾向が顕著であり、最終的には低速コントロールデッキのようなコンセプトにシフトしていきました。

 これについてはデッキレシピを見比べた方が分かりやすいと思われるため、初期のものと晩期のものをそれぞれ下記に掲載します。

 

サンプルレシピ(2009年4月18日)
モンスターカード(21枚)
×3枚 終末の騎士
ダーク・グレファー
BF-暁のシロッコ
BF-疾風のゲイル
BF-大旆のヴァーユ
×2枚 ネクロ・ガードナー
×1枚 カードガンナー
ゾンビキャリア
ダーク・アームド・ドラゴン
メタモルポット
魔法カード(10枚)
×3枚 異次元からの埋葬
×2枚 闇の誘惑
×1枚 大嵐
死者蘇生
洗脳-ブレインコントロール(エラッタ前)
増援
ハリケーン
罠カード(9枚)
×3枚 ゴッドバードアタック
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 激流葬
死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)
聖なるバリア -ミラーフォース-
ダスト・シュート
エクストラデッキ(15枚)
×3枚 BF-アームズ・ウィング
×2枚 BF-アーマード・ウィング
×1枚 キメラテック・フォートレス・ドラゴン
A・O・J カタストル
ギガンテック・ファイター
ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)
スターダスト・ドラゴン
ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)
ダークエンド・ドラゴン
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
ブラック・ローズ・ドラゴン
メンタルスフィア・デーモン

 

サンプルレシピ(2011年3月1日)
モンスターカード(18枚)
×3枚 終末の騎士
BF-暁のシロッコ
BF-大旆のヴァーユ
×2枚 カードガンナー
ダーク・グレファー
×1枚 クリッター(エラッタ前)
ゾンビキャリア
ダーク・アームド・ドラゴン
BF-疾風のゲイル
BF-精鋭のゼピュロス
魔法カード(10枚)
×3枚 強欲で謙虚な壺
×2枚 サイクロン
×1枚 異次元からの埋葬
死者蘇生
増援
ブラック・ホール
闇の誘惑
罠カード(12枚)
×3枚 次元幽閉
×2枚 ゴッドバードアタック
奈落の落とし穴
×1枚 異次元からの帰還
王宮の弾圧
神の宣告
激流葬
聖なるバリア -ミラーフォース-
エクストラデッキ(15枚)
×3枚  
×2枚 BF-アーマード・ウィング
BF-アームズ・ウィング
×1枚 A・O・J カタストル
A・O・J ディサイシブ・アームズ
インフェルニティ・デス・ドラゴン
スクラップ・ドラゴン
スターダスト・ドラゴン
ダークエンド・ドラゴン
大地の騎士ガイアナイト
氷結界の龍 トリシューラ
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)
ブラック・ローズ・ドラゴン
BF-孤高のシルバー・ウィンド

 

 一見すると似通ったリストに見えてもおかしくありませんが、中身は完全に別物のデッキです。共通するのは「BF-大旆のヴァーユ」による墓地シンクロを軸に戦っていくという根元のコンセプトだけで、それ以外の面についてはかなりの差異が見受けられます。

 最大の違いはやはり「BF-疾風のゲイル」「異次元からの埋葬」の枚数ですが、罠カードの選択に関しても見るべきところは多いです。2009年のものは攻撃的なカードが優先して採用されている一方、2011年のものは明らかに中長期戦を見据えた選択であり、その点にコンセプトの違いが如実に現れていると言えます。

 ただし、その分プレイングの難易度は遥かに上昇しており、具体的には「一つミスをしたら負ける」と言われていたほどの気難しさを抱えていました。かつての強みであった「ワンキル性能の高さ」「リソース回復の容易さ」といった長所を失ってしまったことは大きく、初期型のワンキル時代以降は厳しい戦いを強いられる状況にあったことは否めません。

 とはいえ、裏を返せばワンキルもリソース管理も難しくなった状態であっても環境に顔を見せていたということでもあります。実際、2011年3月環境においてはメタゲーム的な噛み合いもあって3~4番手の立ち位置をキープしていたため、その意味では並の環境デッキよりも粘り強い底力を持つアーキタイプだったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「BF-大旆のヴァーユ」及び【墓地BF】についての話は以上となります。

 その独特な性質により参入直後から注目を集め、間もなく【墓地BF】という新たなアーキタイプを成立させました。カード1枚の影響力としてはかなり大きな部類であり、規制経験こそないものの「黒い旋風」などと同格の存在感を放っていたと言っても過言ではありません。

 もちろん、その【墓地BF】が残した実績も数多く、2009年のみならず2010年以降の環境でも活躍していく息の長いデッキです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。