【サイエンカタパ】の歴史・時代ごとのデッキレシピまとめ

2018年5月24日

【デッキデータ】

 活躍期間 2003年7月17日~2005年3月1日
 脅威度 暗黒期
主な仮想敵  【カオス】(~第3期最後まで) 
【宝札マンティコア】(~)
【デッキ破壊1キル】(~)
【ノーカオス】2003年10月15日~)
【次元斬】(2004年2月5日~)
【ミーネ・ウイルス】2004年3月1日~9月1日)
【深淵1キル】2004年3月25日~)
【アビス・コントロール】2004年9月1日~)
【やりくりターボ】(2004年11月25日~2005年3月1日)

 

デッキレシピ

サンプルレシピ(2003年7月) 成立直後
サンプルレシピ(2003年11月20日) 全盛期
サンプルレシピ(2004年8月5日) 最終形態

 

【デッキ解説】

 【サイエンカタパ】は、「魔導サイエンティスト」と「カタパルト・タートル(エラッタ前)」の2体を1ターンでフィールドに揃え、即死コンボを決めることを目的とした先攻1キルデッキです。2003年7月頃に、基礎的なデッキパーツがカードプールに出揃ったことで成立しました。

 仕組みは非常に単純で、魔導サイエンティスト」で呼び出した融合モンスターを「カタパルト・タートル(エラッタ前)」でそのまま射出していくという流れです。その火種となるモンスターは攻撃力2300の「紅陽鳥」を筆頭に、攻撃力2250の「アクア・ドラゴン」、その他攻撃力2200の各種融合モンスターが続きます。

 ライフコストの都合上、「魔導サイエンティスト」の効果は7回しか使用できませんが、最後に「魔導サイエンティスト」「カタパルト・タートル(エラッタ前)」自身を射出することで総ダメージが8000を超えます。特定のモンスター2体を揃えるだけで勝利が確定するため、その凶悪さはこれまでの先攻1キルデッキの比ではありません。

 一応、【エクゾディア】(第1期)【現世と冥界の逆転】(第2期)などはこのデッキに匹敵する凶悪さを備えていましたが、現役期間の長さに関してはこの【サイエンカタパ】が飛び抜けており、被害の大きさを鑑みれば遊戯王最悪の先攻1キルデッキと称することに不足はないでしょう。

 実際に当時の環境でも猛威を振るい、最終的には世界大会レベルの領域でゲームを荒廃させてしまったほどです。流石に世界大会の舞台そのもので結果を残すことはありませんでした(※)が、その予選大会においては上位入賞者の使用デッキが【サイエンカタパ】で占められてしまったことすらありました。

(※念のため、世界大会の使用分布はほぼ【カオス】1色でした)

 

2003年7月(成立直後)

サンプルデッキレシピ(2003年7月17日)
モンスターカード(11枚)
×3枚 カタパルト・タートル(エラッタ前)
混沌の黒魔術師(エラッタ前)
魔導サイエンティスト
×2枚 トゥーン・キャノン・ソルジャー
×1枚  
魔法カード(29枚)
×3枚 ディメンション・マジック
トゥーンのもくじ
ハリケーン
魔法再生
名推理
遺言状
リロード
×2枚  
×1枚 大嵐
苦渋の選択
強欲な壺
死者蘇生
手札抹殺
天使の施し
ハーピィの羽根帚
早すぎた埋葬
罠カード(0枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚  
エクストラデッキ(24枚)
×3枚 アクア・ドラゴン
紅陽鳥
サウザンド・アイズ・サクリファイス
デス・デーモン・ドラゴン
ドラゴン・ウォリアー
魔人 ダーク・バルター
×2枚 金色の魔象
ソウル・ハンター
ブラキオレイドス
×1枚  

 

 しかしながら、そんな【サイエンカタパ】も当初はそれほど支配的な地位は築いておらず、【宝札マンティコア】など他の先攻1キルデッキとも大きな差はない状況でした。

 「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」「魔導サイエンティスト」がそれぞれ3積みされているなど、一部全盛期をも上回る凶悪さを内包しているリストですが、いかんせん周りのエンジンパーツが貧弱すぎることは否めません。それほど効果的に働くわけではない「ディメンション・マジック」がフル投入されていることからもその事実が窺えます。

 もちろん、この時期のものであっても十分に先攻1キルデッキとして名乗れる強さではあるのですが、シングル戦ならばともかくマッチ戦を勝ち抜けるほどの安定感はありません。おおむね地雷デッキという評価がふさわしく、実際に当時の環境は【カオス】1強に近い時代となっていました。

 

2003年10月

 その後、3ヶ月ほどは地雷デッキの一種として一定の脅威を振り撒いていましたが、10月15日の制限改訂でキーカード2種を同時に失い、大打撃を被っています。

 「魔導サイエンティスト」「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」が制限カードとなったことは当時の【サイエンカタパ】にとっては致命的です。「名推理」だけではモンスターを思うように展開できず、それを補っていた「ディメンション・マジック」もほとんど使いものにならなくなっています。

 その結果、デッキスペースが歯抜け状態になってしまい、まともにデッキとしても成立しなくなりました。「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」を組み込んで罠型に変形するなど、全く対応できないわけではありませんでしたが、いずれにしても大幅に弱体化してしまったことは明らかです。

 それを裏付けるように当時のメタゲームはビートダウン優勢のものへと変化していき、この時期の【サイエンカタパ】もほどなく環境から消えていくことになりました。

 

2003年11月(全盛期)

サンプルデッキレシピ(2003年11月20日)
モンスターカード(7枚)
×3枚 カタパルト・タートル(エラッタ前)
×2枚  
×1枚 混沌の黒魔術師(エラッタ前)
処刑人-マキュラ(エラッタ前)
トゥーン・キャノン・ソルジャー
魔導サイエンティスト
魔法カード(28枚)
×3枚 デビルズ・サンクチュアリ
トゥーンのもくじ
名推理
モンスターゲート
遺言状
リロード
×2枚 増援
魔法再生
×1枚 苦渋の選択
強欲な壺
死者蘇生
手札抹殺
天使の施し
早すぎた埋葬
罠カード(5枚)
×3枚 強欲な瓶
×2枚  
×1枚 無謀な欲張り
リビングデッドの呼び声
エクストラデッキ(24枚)
×3枚 アクア・ドラゴン
紅陽鳥
サウザンド・アイズ・サクリファイス
デス・デーモン・ドラゴン
ドラゴン・ウォリアー
魔人 ダーク・バルター
×2枚 金色の魔象
ソウル・ハンター
ブラキオレイドス
×1枚  

 

 ところが、その僅か1ヶ月後の11月20日、レギュラーパック「天空の聖域」が販売されたことで状況が大きく動きます。

 「モンスターゲート」の参入によって【サイエンカタパ】が大幅に強化を受け、最凶最悪の先攻1キルデッキとして環境を荒らし始めることになりました。おおよそのデッキのひな形がこの時に完成しており、世に言う【サイエンカタパ】という言葉から想像できる凶悪なデッキに仕上がっています。

 しかしながら、デッキ内に「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」のギミックが残っていることからも分かるように、この時点で全てのデッキパーツが出揃っていたわけではありません。逆にこの時ですら全盛期には至っていなかったという見方もできますが、【エクゾディア】(第1期)【現世と冥界の逆転】(第2期)と比べればやや見劣りするのは事実です。

 また、この時点ではまだ全盛期ほどの知名度はなく、遭遇率そのものはさほど高くなかった背景もあります。

 とはいえ、だからと言って先攻1キルが許されるわけではありません。実際に同年のジャンプフェスタではワンキルの横行によって連勝のハードルを大幅に上げてしまい、結果的にプロモカードの高騰を招いてしまった(※)背景もあり、この時期の遊戯王OCGが暗黒時代に突入していたことは間違いないと言えるでしょう。

(※また、これにより来年度はプロモカードの入手条件が「5連勝」から「合計5勝」に変更されるといった出来事も起こっています)

 

 混沌の2003年が終わりを告げ、第3期も終盤となる2004年3月遂に遊戯王史上初となる禁止カード制度が導入されました。

 「サンダー・ボルト」を筆頭に多数の禁止級パワーカードが規制され、当時の環境が根底からひっくり返っています。【グッドスタッフ】の代表である【カオス】はもちろんのこと、当時のあらゆるビートダウン系デッキが構築の変更を余儀なくされたと言っても過言ではありません。

 しかしその一方で、【サイエンカタパ】は全くのノーダメージという状況でした。

 当時の【サイエンカタパ】の悪名を鑑みる限り、この規制状況は明らかに何かがおかしかったと言わざるを得ません。禁止カード制度の導入に慎重になっていた可能性もありますが、これを規制しなければ一体何を規制するのかという話になってしまいます。

 ちなみに、2番手である【デッキ破壊1キル】は「サイバーポッド」の禁止カード化によって大打撃を受けています。こうした事情を踏まえた上でも、やはりこの時に【サイエンカタパ】が見落とされたことは如何にも不自然です。

 加えて、同時期に現れた「魔法石の採掘」の存在も見過ごせません。

 「魔法再生」と違って手札コストの種類に制約がなく、これまで以上に展開の幅が広がる結果に繋がっています。もちろん、処刑人-マキュラ(エラッタ前)」を墓地に送るルートが増えたことも追い風です。

 結局、第3期の最後に至るまで【サイエンカタパ】の勢いは収まらず、それどころか加速したまま第4期へともつれ込むことになりました。

 

【サイエンカタパ】(第4期)

 混沌の第3期を乗り越え、第4期突入後の環境においても【サイエンカタパ】の脅威は残ります。

 第4期初頭環境は【ミーネ・ウイルス】が支配する時代であり、既存のビートダウンデッキは「ウイルス地獄」とも言える環境に苦しんでいましたが、コンボデッキである【サイエンカタパ】はこの影響を全く受けません。

 むしろ直前の制限改訂で「いたずら好きな双子悪魔」や「王宮の勅命(エラッタ前)」が消えていたため、相対的にコンボを阻害されにくくなっていた始末です。先攻を取られた場合も動きを潰される確率が下がり、これまで以上にその悪名を広めていっています。

 

2004年8月(最終形態)

サンプルデッキレシピ(2004年8月5日)
モンスターカード(6枚)
×3枚 カタパルト・タートル(エラッタ前)
×2枚  
×1枚 混沌の黒魔術師(エラッタ前)
トゥーン・キャノン・ソルジャー
魔導サイエンティスト
魔法カード(34枚)
×3枚 デビルズ・サンクチュアリ
トゥーンのもくじ
ハリケーン
魔法石の採掘
名推理
モンスターゲート
遺言状
リロード
連続魔法
×2枚 魔法再生
×1枚 強欲な壺
死者蘇生
手札抹殺
天使の施し
早すぎた埋葬
罠カード(0枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚  
エクストラデッキ(24枚)
×3枚 アクア・ドラゴン
紅陽鳥
サウザンド・アイズ・サクリファイス
デス・デーモン・ドラゴン
ドラゴン・ウォリアー
魔人 ダーク・バルター
×2枚 金色の魔象
ソウル・ハンター
ブラキオレイドス
×1枚  

 

 2004年8月5日、レギュラーパックから「連続魔法」を獲得し、とうとう【サイエンカタパ】が最終形態へと進化を遂げます。全盛期の【サイエンカタパ】と聞いた場合、この時のリストが頭に浮かぶ方がほとんどなのではないでしょうか。

 モンスター6枠、魔法34枠という信じがたい比率となっており、全盛期の【サイエンカタパ】が持つ異様さが浮かび上がってくるリストです。これまで必須枠に近かった「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」のギミックが抜け、完全に【推理遺言ゲート】ギミックに特化していることが分かります。

 また、副産物として「魔法再生」の使い勝手が向上していることも見逃せません。流石に腐りやすいため上記レシピでは2枚に抑えられていますが、場合によってはフル投入も検討できるのではないでしょうか。

 それ以外の特徴的な部分としましては、「ハリケーン」が3積みされていることが挙げられます。これは相手のカウンターをケアするための露払い札であり、要は後攻用の切り返しカードです。

 構造上、【サイエンカタパ】は「サンダー・ドラゴン」「成金ゴブリン」などの優秀な圧縮用カードを積むことができません。厳密には、「精神統一」などを強引に積むことはできますが、気休めに近い圧縮効果であり、その分のスペースを伏せ除去に割いた方が結果的には安定します。

 一応、状況によっては「早すぎた埋葬」を再利用するカードとしても使用できることは覚えておいて損はありません。その場合、ライフコストの兼ね合いから6回分しか射出ダメージを稼げないため、「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」を巻き込むなどの特殊な展開ルートが必要になるでしょう。

 スペースの活用法は他にも存在し、その中でも有名なのは「神秘の中華なべ」などのライフゲインカードです。「魔導サイエンティスト」で「おジャマ・キング」を呼び出せば差し引きでライフが2000増えるため、ダメージが足りない場合の保険として使われることもありました。

 

 2004年9月1日に第4期2度目となる制限改訂が行われ、【カオス】を含む様々なデッキに規制の手が加わっています。

 しかし、非常に信じがたいことに、この時の規制においても尚【サイエンカタパ】に対処が入ることはありませんでした。既にデッキ成立から1年以上が経過しており、あまつさえ選考会でも結果を残したほどであったにもかかわらず、この体たらくです。

 流石に意味不明の状況であり、当時の開発側が一体何を考えていたのかは皆目見当がつきません。あまり過ぎたことに突っ込むのも野暮というものですが、当時のプレイヤーにとっては暗澹たる状況(※)だったのではないでしょうか。

(※いわゆる対人的な事情により、場所によってはトラブル防止のため店舗単位で独自に使用が控えられるケースすらあったと言われています)

 

 その後、全盛期【サイエンカタパ】の暴走は6ヶ月間に渡って続きます。それまでに2度のレギュラーパックの販売があり、大きくカードプールが更新されていましたが、【サイエンカタパ】に対抗できる英雄が現れることは遂にありませんでした。

 最終的には、2005年3月の制限改訂でコナミの裁きを受けることになります。

 最大のキーカードであり、諸悪の根源でもある「魔導サイエンティスト」が禁止カードに指定され、とうとう【サイエンカタパ】にも年貢の納め時が訪れました。その現役期間は1年8ヶ月にも及んでおり、先攻1キルデッキとしては最長クラスの寿命です。

 参考までに、【エクゾディア】(第1期)の寿命は4ヶ月強、【現世と冥界の逆転】(第2期)の寿命は1ヶ月強(下積み時代を含めれば4ヶ月)となっています。まさに桁違いとも言える長寿デッキであり、【サイエンカタパ】の絶大な悪名がここから来ていることは間違いありません。

 当然のことながら、この規制状況は現在に至るまで動いておらず、今後も規制緩和が成される気配は皆無です。いわゆる弱体化エラッタによって「魔導サイエンティスト」が現役復帰する可能性はありますが、いずれにしても【サイエンカタパ】がそのままの姿で復活することは未来永劫ないのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 【サイエンカタパ】に関する話は以上です。

 デッキ自体の凶悪さもさることながら、何よりも恐ろしかったのはその圧倒的な寿命の長さに他なりません。もはや遊戯王プレイヤーにとっては伝説的な存在であり、これが現役の時代において真っ当なゲームバランスが成り立つことはありませんでした。

 もっとも、今となっては各種手札誘発によって簡単に初動を潰されてしまうため、仮に現環境に殴り込んできたとしても【サイエンカタパ】として結果を残すことはないでしょう。

 つまり、【サイエンカタパ】以外の方法で暴れ回ることは火を見るより明らかです。結局のところ、【サイエンカタパ】の問題の全ては魔導サイエンティスト」が凶悪すぎる(※)という結論に集約されるのかもしれません。

(※余談ですが、禁止制限無視プールでは1枚初動のマッチキルパーツと化すことでも有名です)

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史