【終焉のカウントダウン】まさかの環境入り 遅延系の地雷デッキ

2019年3月29日

【前書き】

 【第6期の歴史24 【魔轟神】が環境上位だった頃 2010年環境における奮闘】の続きになります。ご注意ください。

 第7弾のデュエルターミナルから現れた【魔轟神獣】によって【魔轟神】が大きく強化され、次第に環境でも上位に名を連ねるようになりました。これまではファンデッキ級の強さに過ぎなかったカテゴリの突然の環境入りは当時のプレイヤーにも驚かれており、期待の新勢力として多くの注目を集めています。

 新たなアーキタイプの参入によってメタゲームが少なからず変動する最中、そうした環境を揺るがす大型ルーキーが現れたのは11月中旬のことでした。

 

バトルフェーダーが強すぎると言われていた時代

 2009年11月14日、レギュラーパック「ABSOLUTE POWERFORCE」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4070種類に増加しています。

 全体的に専用サポートカードの収録枠が多かったタイトルですが、一部には優秀な汎用カードも含まれており、また専用サポートながら出張適性の高い優良カードも多数輩出していたパックです。前者の筆頭が「デモンズ・チェーン」であり、後者については「墓守の末裔」「調和の宝札」「ドリル・ウォリアー」といったカード群が該当しています。

(※特に「ドリル・ウォリアー」は将来的に【クイックダンディ】成立の立役者にもなったカードです)

 変わったところでは、一時期【インフェルニティ】や【旋風BF】の対策として脚光を浴びた「聖なるあかり」など、メタカードとして優秀さを発揮したカードも目を引きます。

 とはいえ、そんな中でも一際注目を受けていたのは「バトルフェーダー」だったのではないでしょうか。

相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動する事ができる。このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 相手の直接攻撃宣言時に自身を手札から特殊召喚し、そのままバトルフェイズを終了させてしまう効果を持ったカードです。分類上は「冥府の使者ゴーズ」や「トラゴエディア」の類似カードに該当していますが、こと防御性能に関してはそれらの遥か上を行っていると言っても過言ではありません。

 問答無用でバトルフェイズを終了させるゆえに打点で超えられる心配もなく、また一連の効果ゆえに「スキルドレイン」などで効果を無効にされることもありません。当時のカードプールで「バトルフェーダー」を止める現実的な手段は「王宮の弾圧」や「フォッシル・ダイナ パキケファロ」などの特殊召喚メタ、あるいは「剣闘獣の戦車」程度しかなく(※)、これを握っている限りほぼ確実に1ターンを生き残ることができました。

(※一応、やや尖ったところでは「天罰」や「死霊騎士デスカリバー・ナイト」が対抗策になり得ますが、この時期はこれらがメインから採用されるデッキは限られていました)

 反面、ステータスは攻守0と最低の数値であり、そのままでは一度限りの壁にしかならないという弱点もあります。しかし、シンクロ召喚やアドバンス召喚のサポートとしては高い有用性を発揮するため、デッキによっては防御札を兼ねる展開札のように運用することも可能です。

 実際に2010年3月環境では【ガエル帝】のキーカードとして名を馳せており、各種【帝】モンスターのリリース要員はもちろん、「フォーミュラ・シンクロン」への繋ぎパーツとしても活用されていました。

 そのため、防御カードとしては明らかに強すぎると言われており、一時期は規制が懸念されることすらあったほどの存在です。実際、この時期は「氷結界の龍 トリシューラ」などの天敵もおらず、「エフェクト・ヴェーラー」を始めとするライバルも存在しなかったため、手札誘発の中では事実上の1強状態にあったと言っても過言ではないでしょう。

 

【ライトロード】の有力メタ 1ターンの重み

 当然のことながら、「バトルフェーダー」の参入により最も大きな打撃を受けたのは【ライトロード】でした。

 性質上、【ライトロード】というデッキは基本的に長期戦には全く適性がなく、常にデッキ切れによる自滅のリスクと隣り合わせの状況に置かれています。もちろん、自滅する前に相手を倒してしまえる圧倒的な速度こそが【ライトロード】の強みなのですが、逆に言えば意図的にゲームを長引かせてくる相手には苦戦を強いられることは避けられません。

 対して、「バトルフェーダー」は明らかに「ゲームを長引かせるためのカード」であり、これをまともに受けた時の被害は他のデッキの比ではありません。勝利に目がくらんで全力展開したところに「バトルフェーダー」を食らい、そのままデッキ切れにより自滅を免れなくなるといったシチュエーションも決して珍しいことではなかったのです。

 そのため、これ以降【ライトロード】を使う場合には「バトルフェーダー」を撃たれても致命的な状況に陥らないよう、常に余力を残して動くことを強いられるようになっています。事実上、環境に「バトルフェーダー」が存在すること自体が【ライトロード】の動きを牽制していた形であり、カード1枚の持つ影響力としては破格と言うほかないでしょう。

 もっとも、ある程度余力を残したプレイングを意識することで自滅率を最小限に抑えることはできたため、根本的には「バトルフェーダー」だけでは【ライトロード】対策にはならないとも言われていました。実際のところ、対【ライトロード】における「バトルフェーダー」はいわゆる「初見殺し」程度の効力しかなく、しっかりとケアをしてくる相手にはむしろ「撃たされて」しまうケースの方が多かったのではないでしょうか。

 

【メタビート】の革命 遅延戦略の芽吹き

 しかし、やはり「バトルフェーダー」の防御能力が【ライトロード】に対して有効だったことも間違いなく、この戦術に特化したデッキとして【終焉のカウントダウン】の評価が急浮上していくことになります。

2000ライフポイント払う。発動ターンより20ターン後、自分はデュエルに勝利する。

 上記はデッキ名にもなっている「終焉のカウントダウン」のテキストであり、発動後20ターン目に特殊勝利する効果を持った魔法カードです。これ自体は第3期中頃に現れていたカードですが、参入当初から長らくトーナメントレベルの性能とは思われておらず(※)、これを用いる【終焉のカウントダウン】もカジュアルデッキの一種として細々と開発が進んでいる程度でした。

(※一応、一時期の【ジャマキャン】で使えないかどうかが試されていたこともありましたが、結局採用には至っていません)

 ところが、この時に「バトルフェーダー」が【ライトロード】対策として注目を集めた結果、「いっそ防御に完全特化したデッキであれば明確に有利を取れるのではないか」という認識が生まれるに至り、そのコンセプトのひな形として【終焉のカウントダウン】に白羽の矢が立ったというのが大まかな事の経緯となります。これには直前に現れていた「ゼロ・ガードナー」の存在も追い風となり、やがては「遅延系デッキ」の筆頭として名を馳せていくことになりました。

 ちなみに、「遅延」というとマイナスのイメージ(※)が付き纏いますが、これはいわゆるルールの穴を付いたグレーなプレイングのことではありません。

(※過去の環境においては【Vドラコントロール】【MCV】、【トランス】などのマッチキルデッキが遅延系と言われることもありました)

 ここで言う「遅延」とは大まかには「ゲームレベルでの」時間稼ぎのことであり、相手の攻め手をいなし続けることで継戦能力の枯渇を狙う「待ちの戦略」のことを指します。例えば2009年3月2009年9月環境で【ダークアンデット】【レスキューシンクロ】相手に取ったプランも広義ではこれに該当していたと言えるでしょう。

 言い換えれば、これまでの【メタビート】の基盤であった「相手に行動させない」というメタの張り方ではなく、「行動は許すが、勝たせない」という新たな【メタビート】の概念が芽吹き始めていたのです。

 これは当時の【ライトロード】相手には極めて有効な対策であり、特に無警戒の相手には「終焉のカウントダウン」による特殊勝利を待たずに自滅勝利を狙うのも難しいことではありませんでした。

 もちろん、【ライトロード】側にも「オネスト」や「ネクロ・ガードナー」によるビートダウン、あるいは「ライトロード・エンジェル ケルビム」のアドバンスセットからの反転召喚などといった攻め手の用意はあったため、流石に手なりでプレイするだけで勝てるほど甘い相手ではなかったことは確かです。特に【ライロアンデット】は盤面に出てしまった各種ライトロードを「ゾンビキャリア」でシンクロモンスターに変換することもできたため、油断していると逆に自分の方が王手をかけられていたということにもなりかねません。

 とはいえ、根本的な部分で相性差が付いていたことも間違いなく、実際に当時の【ライトロード】のメタデッキとしては最有力候補の一角に名前が挙がっていたアーキタイプです。

 

【ライトロード】以外には微妙 地雷の域を抜け出せず

 そんな【終焉のカウントダウン】というデッキですが、結局当時の環境では大々的な実績を残すことはできず、終始地雷デッキの域にあったことは否めません。

 理由は至ってシンプルで、単に【ライトロード】以外の相手には優位性を発揮できなかったからです。

 とりわけ苦しかったのが【次元エアトス】や【次元剣闘獣】などの【メタビート】系デッキであり、特に【次元剣闘獣】は「どうやって戦えばいいのか分からない」レベルで勝ち目がないと言われていました。これと戦う上では「魔宮の賄賂」「剣闘獣の戦車」などのカウンターを意識せざるを得ない以上、防御カードを余分に伏せておく必要がありますが、それはそれで「剣闘獣ガイザレス」に割られてしまうという問題があり、どちらの戦い方を選んでも敗因が違うだけで結局負けるパターンがほとんどだったからです。

 その他、サイド戦から投入される各種メタカードの存在も厳しい障害となり、「王宮のお触れ」などを置かれてしまうとその時点で勝ち目がなくなります。なおかつ、デッキスペースの関係で「メタのメタ」を積むというのも現実的ではなく、対策として残るのは「相手がサイドにメタカードを用意していないことを祈る」という丸投げ的なものだけでした。

 逆に言えば、そうした苦境の中ですら【ライトロード】のメタとして注目されていたということでもあり、それだけ当時の環境における【ライトロード】の脅威が大きなものだったと見ることもできるのではないでしょうか。

 

現在では時代遅れ ゲームスピードの壁

 ちなみに、こうした遅延系デッキの概念は現在では廃れて久しく、事実上は「時代遅れのアーキタイプ」であると言われています。

 というのも、ゲームバランスのインフレが顕著になった現在ではそもそも相手が勝手に息切れを起こすというのはほぼあり得ない話になってしまったため、ただ攻め手を防いでいるだけではどうにもならないことがほとんどだからです。加えて、自発的にアドバンテージを稼ぐ手段がほぼない以上、通常ドローで不要牌を引き込むごとに敗北に近付いていってしまう苦しい欠陥も見過ごすことはできません。

 また、相手のデッキタイプによっては無防備にターンを返したが最後、あっという間に盤面を制圧されて抵抗する術そのものがなくなってしまうケースもあります。つまり時間を稼げば稼ぐほど逆に相手を有利にしてしまうという友情コンボのような状況が出来上がってしまうため、根本的に「遅延」というゲームプラン自体が成り立たなくなってしまったことは否めません。

 もちろん、メタを上手く読み、プレイングを洗練し、そして運にも恵まれれば地雷的に結果を出せる可能性はゼロではないですが、やはり今となっては遅延系デッキが明確な勢力として浮上することは期待できなくなっていると考えるべきでしょう。

 

【後編に続く】

 【終焉のカウントダウン】についての話は以上です。

 かつてはカジュアルデッキの一種として人知れず使われていたマイナーデッキに過ぎませんでしたが、【ライトロード】の台頭や「バトルフェーダー」の誕生によってまさかの環境入りを果たしています。健全な意味での遅延系デッキとしては史上初となる環境クラスのアーキタイプであり、その意味では歴史的なデッキの一つに数えられる偉大な存在と言えるでしょう。

 しかし、この時に考案されていた革新的なメタデッキは【終焉のカウントダウン】だけではありません。方向性こそ異なれど、同じく【ライトロード】のメタとして脚光を浴びるに至った新進気鋭のアーキタイプも産声を上げていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。