遊戯王の歴史 2001年の総括

2018年2月13日

【前書き】

 【第2期の歴史39 処刑人マキュラ 環境を荒廃させた遊戯王史上最悪のカード】の続きとなります。ご注意ください。

 第2期突入から20ヶ月が経過し、2001年が終わりを迎えました。カードプールの更新量は計238枚と前年、前々年から更に低減していますが、密度の高さはそれらの比ではなかったことは言うまでもありません。

 【グッドスタッフ】【デッキ破壊】がしのぎを削る平和な前半期に反して、後半期では【宝札エクゾディア】を発端に様々な先攻1キルデッキが現れ、最後には【八汰ロック】によって【グッドスタッフ】すら塗り潰されてしまった始末です。どう言い繕っても健全な環境とは言い難く、カードゲームとしての姿を損なってしまっていることは明らかでした。

 この記事では、そうした一連の時代の流れを大まかに解説(※)いたします。

(※詳細についてはリンク先の個別記事をご確認ください)

 

【遊戯王の歴史 2001年】

 2001年に起きた出来事を時系列順にまとめていきます。

 

【グッドスタッフ】【デッキ破壊】の時代

2001年1月15日 第7回制限改訂

 「苦渋の選択」「補充要員」が制限カード指定を受け、【苦渋エクゾディア】が大きく力を落としています。

 「クリッター(エラッタ前)」「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」といった優秀なサーチャーも準制限カードに指定されており、当デッキにとっては非常に苦しい規制です。コンボパーツを潰されたコンボデッキがデッキパワーを維持することは難しく、これ以降【苦渋エクゾディア】は環境の最前線から姿を消すことになりました。

 自然と当時の勢力図は【グッドスタッフ】【デッキ破壊】が2分する格好となり、それらがしのぎを削り合う2強環境へと移行していきます。

2001年1月18日 「PREMIUM PACK 4」一般販売

 「魔法の筒」という優秀なカードが収録されていましたが、この時には既に制限カードに指定された後であり、一般プレイヤーが「魔法の筒」を3枚積める時期は存在していませんでした。

 この規制状況は非常に長い期間続き、解禁には遥か未来である第8期を待つ必要がありました。

2001年2月9日 週刊少年ジャンプ付録カード誕生

 「タイミングを逃す」ルールの代名詞とも言える「暗黒魔族ギルファー・デーモン」が誕生(全970種類)し、ルール整備のきっかけとなりました。ただし、将来的に発生し得る問題を見越した先出しのルール改訂であり、特定のコンボを名指ししていたわけではありません。

 そのため、この時点では本ルールの知名度も低く、これが広く知れ渡るようになるのは約9ヶ月後、「リーフ・フェアリー」とのループコンボが注目を集めてからのこととなります。

2001年2月22日 「鋼鉄の襲撃者-METAL RAIDERS-」販売

 「Vol.6」「Vol.7」「BOOSTER7」からの再録パックです。「大嵐」など、ブースター収録ゆえにレア度の割に入手が難しい優良カードが含まれていたため、ブースター未設置店舗を拠点とするプレイヤーには需要の高いパックとなっていました。

2001年3月1日 第2回全国大会開催

 優勝、準優勝、第3位のプレイヤーをモチーフにしたプロモーションカードが製作されています。いずれもゲーム使用不可カードであり、プロモカードにふさわしく非常に独特なカードデザインが成されているのが特徴です。

 

【宝札エクゾディア】の時代

2001年4月19日 「Spell of Mask -仮面の呪縛-」販売

 52種類のカードが収録されており、うち51枚が新規カードです(全1021種類)。再録カードは「青眼の白龍」であり、アルティメットレア仕様での収録となりました。

 優秀な全体除去地雷となり得る「激流葬」が誕生したほか、速攻魔法の除去カードである「死者への供物」、最強クラスの打点補助装備魔法「団結の力」「魔導師の力」など、様々な優良カードが現れています。

 しかし、生還の宝札」という怪物の前にはそれらも霞んでしまうことは否めません。そのドロー性能から様々な運用方法が試されることとなり、やがては先攻1キルデッキである【宝札エクゾディア】の成立を招いてしまいました。

 また、ホーリー・エルフの祝福」の裁定が現在と異なっていた影響から、【宝札ビッグバン】という先攻1キルデッキも考案されています。こちらは当時としてはデッキの構造が複雑だったため、開発には相応の時間を要したものと思われますが、結局は時間の問題だったのではないでしょうか。

2001年5月上旬~中旬 「LIMITED EDITION 3」応募企画実施

 「遊戯パック」「城之内パック」「海馬パック」にそれぞれ3種類、計9種類のカードが収録されており、うち6枚が新規カードとなっています(全1027種類)。

 「スケープ・ゴート」という可能性の獣が現れ、早々に【グッドスタッフ】のメンバー入りを果たしています。この時期はそれほど応用手段もなく、真価を発揮していない状況でしたが、単純に防御カードとして見ても優秀であり、実戦級のカードパワーを持っていました。

 一方、「精霊の鏡」は環境的に非常に強く、使いどころを選ぶカードであるにもかかわらずメインデッキに入るケースすらあったほどです。メタゲームはもちろん、プレイングにも影響を及ぼし、強烈な地雷として存在感を示していました。

2001年5月21日 Vジャンプ付録カード誕生

 ルール上別のカード名として扱う効果外テキストを持った「ハーピィ・レディ・SB」が現れています(全1028種類)。これまでにない特殊な性質を与えられたカードではありましたが、環境に与えた影響は皆無でした。

2000年5月28日 第8回制限改訂

 「団結の力」が制限カードに指定されていますが、それによるダメージは一部のデッキにとどまり、大局に影響は及んでいません。

 その一方で、「カオスポッド」「補充要員」が準制限カード、遺言状」に至っては無制限カードにまで規制緩和されており、【デッキ破壊】【宝札エクゾディア】などの上位デッキが強化を受けています。

 とりわけ【宝札エクゾディア】の強化は脅威と言うほかなく、先攻1キル成功率が底上げされた格好です。本来は規制されるべきデッキが逆に強化されているというのはやはり問題があるとしか思えず、この時の改訂が失敗であったことは否定できないのではないでしょうか。

2001年6月28日 「STRUCTURE DECK-遊戯編-」販売

 48種類のカードが収録されており、うち2枚が新規カードです(全1030種類)。ストラクチャーデッキらしく大半が再録カードですが、ゲーム同梱カードなど入手が難しかったカードが多数含まれていたという特徴もあります。

 当時使われていた必須カードもピックアップされていたため、カードが揃い切っていない新規参入者にもありがたい商品となっていました。

2001年7月5日 「遊戯王デュエルモンスターズ5 エキスパート1」販売

 ゲーム同梱カード5種類、同攻略本(上巻)から1種類、計6種類の新規カードが現れています(全1036種類)。

 いずれもコレクションアイテム的な用途が強く、ゲーム面での需要はほとんどないカードでした。

2001年7月12日 「Labyrinth of Nightmare -悪夢の迷宮-」販売

 53種類のカードが収録されており、うち52枚が新規カードです(全1088種類)。再録カードは「ブラック・マジシャン」であり、アルティメットレア仕様での収録となりました。

 「ダーク・ヒーロー ゾンバイア」「魂を喰らう者 バズー」などの優秀なデメリットアタッカーが誕生し、【グッドスタッフ】の採用枠に変化が生じています。「ゴブリン突撃部隊」などとは相互互換の関係であり、環境に応じて使い分ける必要性が出てきている形です。

 また、「王宮の号令」の参戦によって【デッキ破壊】が大きな被害を被っています。メイン戦はともかくサイド戦では苦戦を強いられることは避けられず、結果的にやや勢力を縮小させてしまったことは否めません。

 その他、「異星の最終戦士」「昇霊術師 ジョウゲン」という隠された地雷も現れていましたが、この時点では注目も少なく、環境での活躍もありませんでした。

2001年7月31日 週刊少年ジャンプ付録カード誕生

 当時としては独特な効果を与えられた「アマゾネスの鎖使い」が誕生しています(全1089種類)。

 戦闘破壊された時に相手の手札のモンスター1体を奪い取るという一種の地雷的な能力から、一部では【グッドスタッフ】の隠し味に投入されるケースもありました。

2001年8月7日 週刊少年ジャンプ付録カード誕生

 遊戯王史上初となる罠モンスター、「アポピスの化神」が現れました(全1090種類)。カードパワーは高いとは言えない性能でしたが、これまでにない性質から一定の注目を集めていたカードです。

2001年8月8日 「DM5攻略本(下巻)」販売

 この時に現れた「仮面魔獣デス・ガーディウス」は2015年に再録されるまで絶版状態となっており、非常に長い間入手困難な時代が続いていました(全1091種類)。

2001年8月30日 「Booster Chronicle」販売

 「BOOSTER1」~「BOOSTER6」からの再録パックです。「ヂェミナイ・エルフ」や「天使の施し」といった希少なパワーカードが再録され、ある程度入手がしやすくなりました。

2001年9月6日 「遊戯王真デュエルモンスターズⅡ 継承されし記憶」販売

 ゲーム同梱カード5種類、同攻略本から1種類、計6種類の新規カードが現れています(全1097種類)。

 「ニュート」という露骨なまでに高いカードパワーを持つアタッカーが含まれており、それ目当てに複数本のゲーム購入を強いられる状況に繋がっています。シングル価格も高騰し、3枚揃えるためには多大な出費が必要でした。

2001年9月20日 「Struggle of Chaos -闇を制する者-」販売

 51種類のカードが収録されており、うち50枚が新規カードです(全1147種類)。再録カードは「デーモンの召喚」であり、アルティメットレア仕様での収録となりました。

 最高の戦士族サポートカードである「増援」が現れたほか、「ならず者傭兵部隊」という当時最高峰の除去能力を持ったモンスターも誕生しています。

 メタゲーム面での影響としましては、「デス・デーモン・ドラゴン」の存在が【デッキ破壊】を追い詰めている点が目を引きます。「デビル・フランケン」という汎用カードからメタカードが飛んでくるようになったため、サイド戦どころかメイン戦すら危うくなっている形です。

 流石にここまで来るとトップメタを名乗るのも苦しく、環境上位からは遂に脱落することになりました。

2001年10月25日 「STRUCTURE DECK-城之内編-」販売

 49種類のカードが収録されており、うち2枚が新規カードです(全1149種類)。どちらも環境に影響を与えるようなカードではなく、事実上は再録カード入手のための商品となっていました。

 

【八汰ロック】と【先攻1キル】の時代

2001年11月29日 「Mythological Age -蘇りし魂-」販売

 52種類のカードが収録されており、うち51枚が新規カードです(全1200種類)。再録カードは「ブラック・デーモンズ・ドラゴン」であり、アルティメットレア仕様での収録となりました。

 第2期最凶との評価を与えられたパックとなっており、現在でも禁止カードに封印され続けている極悪カードが多数収録されています。とりわけ「八汰烏」が及ぼした被害は類を見ないほどで、禁止カードの導入と同時に規制を受けて以降、一度もその位置から動いていません。

 さらに、「ラストバトル!」の参戦によって【ラストバトル!】が成立し、新たなタイプの先攻1キルデッキとして猛威を振るうことになります。【宝札エクゾディア】【宝札ビッグバン】と合わせて3種類もの先攻1キルデッキが成立してしまっており、明らかに異常と言うほかない状況です。

 同パックから現れていたファイバーポッド」という爆弾の存在もあり、当時の遊戯王OCGは重度の暗黒時代へと突入していきました。

2001年12月20日 「遊戯王デュエルモンスターズ6 エキスパート2」販売

 ゲーム同梱カード4種類、同攻略本(上巻)から1種類、計5種類の新規カードが現れています(全1205種類)。

 今作以降、同梱カードのランダム収録システムが廃止されているのが大きな特徴です。この変更によってゲーム同梱カードは純粋に「おまけカード」としての性質が強くなりました。

 当ゲーム攻略本に収録されていた「王家の神殿(エラッタ前)」は極めて凶悪なコンボパーツとしての側面を持っており、規制を受けるまでの間、様々な先攻1キルデッキのキーカードを務めていくことになります。

2001年12月21日 Vジャンプ付録カード誕生

 遊戯王史上最悪のカードとも言える「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」が現れました(全1206種類)。

 先攻1キルデッキに罠カードを与えた悪名高い存在であり、遊戯王全体でも五指に入る凶悪カードです。誕生当時も早々に環境で暴れ回ることとなり、半年後の制限改訂では即座に規制が入っています。

2001年12月28日 週刊少年ジャンプ付録カード誕生

 最強のデッキ破壊カードと名高い「現世と冥界の逆転(エラッタ前)」が誕生しました(全1207種類)。

 これによって【現世と冥界の逆転】が成立し、またもや先攻1キルデッキが環境に参戦してきています。【八汰ロック】と【先攻1キル】が勢力を2分する格好であり、真っ当なゲームバランスが成り立っていないことは言うまでもありませんでした。

 

【まとめ】

 2001年に入ってすぐの制限改訂で【苦渋エクゾディア】が姿を消し、【グッドスタッフ】【デッキ破壊】が一騎打ちを迎える状況からスタートを切っています。

 その後、4月までは上記の2強環境が続きますが、4月19日に「生還の宝札」が現れたことで雲行きが怪しくなり、先攻1キルの脅威がにわかに活性化しました。5月の制限改訂で【宝札エクゾディア】の関連パーツが規制緩和されたこともそれを後押ししています。

 爆弾を抱えながらもメタがゆっくりと変遷していき、7月21日に「王宮の号令」が、9月20日に「デス・デーモン・ドラゴン」が誕生したことを受けて【デッキ破壊】が環境上位から撤退しました。

 その後、11月29日に「八汰烏」や「ラストバトル!」などの凶悪カードが多数産声を上げ、遊戯王OCGは完全なる暗黒期に落ちていくことになります。続く12月には「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」や「現世と冥界の逆転(エラッタ前)」も現れ、そのダメージがもはや修復不可能な領域にまで達したことは明らかでした。

 総評としましては、前半期の嵐の前の静けさを通り過ぎて以降は先攻1キルの猛吹雪が吹き荒れており、カードゲームとしての体裁が取れているとは言い難い状況です。初年である1999年に逆戻りしているかのような始末であり、暗黒期指定も甘んじて受け入れるほかありません。

 とはいえ、何事も3年目は崩れるというジンクスもあるにはあります。結果としては失敗に終わってしまいましたが、それは逆に熱心な挑戦の裏返しとも取れるのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史