遊戯王の歴史 2003年の総括

2018年4月5日

【前書き】

 【第3期の歴史31 優良戦闘サポート 収縮の誕生 【ミーネ・ウイルス】の必須カード】の続きとなります。ご注意ください。

 第3期突入から20ヶ月が経過し、2003年が終わりを迎えました。カードプールの更新量は計246種類と前年を大きく下回っていますが、逆に追加カードの内容は比較にならないほど濃く、環境に及ぼした影響の大きさも比較になりません。

 第3期の中心と言って良い1年間は暗黒の空気に包まれており、プレイヤーは崩壊したゲームバランスを肌で感じながら嵐が過ぎ去るのを待つしかありませんでした。

 この記事では、そうした一連の時代の流れを大まかに解説(※)いたします。

(※詳細についてはリンク先の個別記事をご確認ください)

 

【遊戯王の歴史 2003年】

 2003年に起きた出来事を時系列順にまとめていきます。

 

【ビートダウン】と【コントロール】の時代

2003年1月1日 第11回制限改訂

 「魔導戦士 ブレイカー」や「同族感染ウィルス」などのパワーカードが規制を受け、全体的に環境のデフレが起こっています。

 さらに、「蝶の短剣-エルマ」に規制が入ったことで【ギアフリード1キル】が事実上の解体宣言を受けました。

 誕生から僅か一ヶ月半の出来事であり、開発側の無限ループへの厳しい姿勢が現れた改訂です。

 当時の主流デッキは【八汰ロック】【トマハン】【デビフラ1キル】【ジャマキャン】などに分かれ、全体的に群雄割拠の時代が広がっていたのではないでしょうか。

2003年1月16日 「BOOSTER PACK COLLECTORS TIN」販売

 遊戯王史上初となる「TIN缶」が販売されています(全1503種)。

2003年1月23日 「DUELIST LEGACY Volume.4」販売

 第2期出身の商品を再録したパックです。「DUELIST LEGACY」シリーズの例にもれず収録数が膨大であり、狙ったカードを引き当てるのは困難でした。

2003年2月20日 「闇魔界の脅威」販売

 レギュラーパックから新規カードが52種類誕生しました(全1555種)。

 【ミーネ・ウイルス】の中核モンスターである「黒蠍-棘のミーネ」が現れています。

 しかし、この時期は「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」が効果的に機能する環境ではなく、そもそもデッキ自体が開発されていません。とはいえ、「黒蠍-棘のミーネ」自体がそこそこ優秀なモンスターであったため、一部では【ビートダウン】系のデッキで使われることもありました。

 また、将来的に環境に大きな影響を及ぼすことになる「月読命」が誕生したのもこの時です。

 しかし、当時は弱いカードだと考えられており、また現実問題として環境的に強みを発揮できる土壌が整っていなかったため、ほとんど注目を集めていませんでした。

2003年2月20日 「遊戯王デュエルモンスターズ8 破滅の大邪神」販売

 ゲーム同梱カード4種類、また同攻略本(上巻)から1種類、計5種類の新規カードが現れています(全1560種)。

 いずれもコレクションアイテム的な内容であり、環境に与えた影響は皆無でした。

2003年4月10日 第12回制限改訂

 「ヴァンパイア・ロード」や「魔鏡導士リフレクト・バウンダー」が制限カードに指定されています。

 環境のデフレによって流行していたカードに対する規制が多く、また当時採用率を落としていたカードの規制緩和も少なくありませんでした。

 一方で、意図は不明ですが「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」が準制限カードに緩和されてしまっています。

 第2期終盤の荒廃を引き起こしたカードであり、あえて規制を緩める理由は皆無であるように思えますが、開発側の判断はそうではなかったことが窺える改訂です。

2003年4月17日 DMインターナショナル ワールドワイドエディション販売

 ゲーム同梱カードとして英語版三幻神(使用不可カード)が、同攻略本から新規カード1枚が誕生しました(全1561種)。

 海外言語に対応した「DM6」であり、良くも悪くもリメイクソフトという評価を付けられています。

2003年4月22日 DM8攻略本(下巻)販売

 書籍同梱カードから「ゴブリンゾンビ」が現れています(全1562種)が、当時はサーチ対象が少なく、あまり注目されていないカードでした。

 

【カオス】の時代

2003年4月24日 「混沌を制す者」販売

 レギュラーパックから新規カードが56種類誕生しました(全1618種)。

 第3期を象徴する凶悪カードである【カオス】シリーズが降臨し、2003年環境を荒らし尽くす結果に繋がっています。

 当時としてはプレイヤーの理解を超えた圧倒的な強さを備えており、あらゆるデッキが環境から駆逐されていきました。

 同パックからは「怒れる類人猿」などの強力な下級モンスターも現れていましたが、「光・闇属性ではない」という一点だけで採用候補から外されてしまうほどであり、この時期の遊戯王が【カオス】に支配されてしまったことを物語るエピソードと言えるでしょう。

2003年4月24日 「DUELIST LEGACY Volume.5」販売

 「Volume.4」と同じく、第2期出身パックを再録したパックです。新規カードの収録はありません。

2003年5月 「LIMITED EDITION 5」応募企画実施

 「遊戯パック」「海馬パック」からそれぞれ3種類ずつ、計6種類の新規カードが現れています(全1624種)。

 この時に現れていた「ヴィクトリー・ドラゴン」は第3期当時はそれほど注目を集めていませんでしたが、第4期ではゲーム面、対人面の双方において多大な被害をもたらしています。

 他の禁止カードとは異なり「生まれてきてはいけなかったカード」以外の何物でもなく、遊戯王OCGというカードゲームそのものに深い傷跡を刻み込みました。

2003年5月22日 「STRUCTURE DECK-遊戯編- Volume.2」販売

 ストラクチャーデッキから新規カードが1種類誕生しました(全1625種)。

 ここで誕生した「ディメンション・マジック」は魔法使い族サポートカードとして長い間活躍することになりますが、【サイエンカタパ】などのコンボデッキで悪用されることも少なくありませんでした。

2003年7月1日 第13回制限改訂

 【カオス】の象徴である「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」が制限カードに指定されました。

 一方で「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」に関してはノータッチであり、依然として【カオス】の1強時代が続いていくことになりました。

2003年7月17日 「暗黒の侵略者」販売

 レギュラーパックから新規カードが56種類誕生しました(全1681種)。

 「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」という巨悪が現れ、【カオス】を中心に環境で猛威を振るっています。

 同時に現れた「次元融合」と合わせて除外ゾーンを重要なリソースに昇華させ、【カオス】の爆発力を大幅に跳ね上げる結果を生み出しました。

 さらに、このカードがきっかけとなって【サイエンカタパ】の成立を引き起こしてしまっています。この時期は「モンスターゲート」を始めとする重要なデッキパーツが未登場でしたが、「ディメンション・マジック」などを活用してコンセプトを成立させていた格好です。

 流石に全盛期ほどの強さはありませんでしたが、先攻1キルデッキとしては十分なデッキパワーを備えており、環境における地雷デッキとして恐れられていきました。

 他方では、同名カードと無限ループを形成する「暗黒のマンティコア」の誕生を受け、先攻1キルデッキである【暗黒マンティコア】が開発されています。

 「生還の宝札」と組み合わせた無限ドローギミックによってエクゾディアパーツを揃える【エクゾディア】の一種であり、事実上は【宝札エクゾディア】の後継デッキです。

 とはいえ、【カオス】の勢いを止めるほどの強さは持ち合わせておらず、地雷デッキという評価に収まっていました。

2003年8月7日 「STRUCTURE DECK-城之内編- Volume.2」販売

 ストラクチャーデッキから新規カードが1種類誕生しました(全1682種)。

 今なお現役を務める強力な墓地肥やしカード「おろかな埋葬」が誕生しましたが、当時はそれほど高い評価は受けていませんでした。

 一方で、コンボパーツとしては優秀であり、【宝札マンティコア】を強化したほか、【デッキ破壊1キル】成立の助けとなっています。いずれも総合的な実力は【カオス】には及びませんでしたが、当時の環境においても一定の脅威を振り撒いていきました。

2003年8月10日 第1回世界大会開催

 遊戯王史上初となる世界大会が開催されています。

 しかし、海外のカードプールが国内のものに追い付いていなかったため、優勝者の使用デッキは【トマハン】でした。

2003年9月19日 「ザ・ヴァリュアブル・ブック6」

 書籍同梱カードとして3種類の新規カードが誕生しました(全1685種)。

 遊戯王史上最凶クラスのドローカードである「第六感」が誕生し、遊戯王OCGを「サイコロゲー」と言わしめるまでに環境を荒廃させています。

 【カオス】はもちろんのこと、【デッキ破壊1キル】【現世と冥界の逆転】などの先攻1キルデッキでも悪用され、デュエル前にサイコロを用意するだけで複雑な顔をされることすら珍しくありませんでした。

2003年10月15日 第14回制限改訂

 「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」「魔導サイエンティスト」など、当時の環境を牛耳っていた凶悪カードが一斉に規制を受けています。

 【カオス】と【サイエンカタパ】に対して厳しい規制が入り、デッキパワーを大きく落としました。特に【サイエンカタパ】はデッキパーツを失った影響で一時的に解体宣言を下されるほどのダメージを負っています。

 環境のデフレが図られた影響で【カオス】以外のデッキにも活躍の場が訪れるようになりましたが、やはり総合力では【カオス】が最も強く、引き続き環境の頂点に君臨することになりました。

 

【サイエンカタパ】の時代

2003年11月20日 「天空の聖域」販売

 レギュラーパックから新規カードが56種類誕生しました(全1741種)。

 「モンスターゲート」の参戦によって【サイエンカタパ】が再び力を取り戻し、最強の先攻1キルデッキとして猛威を振るい始めています。

 これまでとは比較にならないほど高い安定性を手にしており、以降の環境ではゲームバランスを崩壊させる極悪デッキとして多くのプレイヤーを苦しめていきました。

2003年12月11日 「STRUCTURE DECK-海馬編- Volume.2」販売

 ストラクチャーデッキから新規カードが1種類誕生しました(全1742種)。

 将来的に【ミーネ・ウイルス】の密かなキーカードを務める「収縮」が現れています。

 しかし、カードパワー自体は「可もなく不可もなく」であり、【カオス】などの【グッドスタッフ】系デッキで使われるカードではありませんでした。

2003年12月11日 「ストラクチャーデッキ – デラックスセット -」販売

 ストラクチャーデッキを再録しているストラクチャーデッキです。付属のパックも再録パックであり、新規カードの収録はありません。

2003年12月20~21日 「ジャンプフェスタ2004」開催

 会場内で「PREMIUM PACK 6」が先行販売されています。

 「マシュマロン」や「シールドクラッシュ」、「ヂェミナイ・デビル」「八汰烏の骸」などの優良カードが誕生しましたが、一般販売前は絶対数が少なく、物理的に影響が表れにくい状況でした。

 

【まとめ】

 2003年初頭に行われた制限改訂で【ギアフリード1キル】が姿を消し、それ以降は比較的健全なゲームバランスが成立していました。

 しかし、4月に【カオス】が現れてからは一瞬でメタゲームが崩壊していき、【カオス】以外のデッキは生存できない時代が訪れています。時間の経過によって「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」や「第六感」を獲得したことでその脅威は決定的なものとなり、遊戯王屈指の暗黒時代を作り上げてしまった形です。

 その後、10月の制限改訂によって多少は落ち着きを取り戻しましたが、今度は【サイエンカタパ】が猛威を振るい始め、特に対策が打たれないまま2003年の終わりを迎えています。

 結論としましては、前年と比べて遥かに劣悪な環境が広がっていることは明らかであり、カードゲームとしてバランスが取れているとは言い難い状況です。一応、【カオス】の勢いを抑える形での規制は何度も入っていますが、【サイエンカタパ】の方はことごとく規制の手をすり抜けており、全く勢いを抑えることができていません。

 広がり続けるカードプールに押し潰され、開発側がゲームバランスを管理し切れなくなっていた印象は強く、何らかの新しい管理方法を考えなければならない段階に到達していたのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史