遊戯王の歴史 2004年の総括

2018年7月9日

【前書き】

 【第4期の歴史12 ネフティスの鳳凰神 強いようで弱く、しかし制限行きになったカード】の続きとなります。ご注意ください。

 第4期突入から8ヶ月が経過し、2004年が終わりを迎えました。カードプールの更新量は279種類と前年を上回っていますが、逆に禁止級カードの数は少なく、おおむね穏やかな環境推移を辿っていたと言えるでしょう。

 その一方で、遊戯王史上最悪の先攻1キルデッキ【サイエンカタパ】が引き続き猛威を振るうなど、極めて重大な問題も見られます。非常に極端なゲームバランスが展開されており、ある意味では前年に勝るとも劣らない暗黒環境が構築されていたのかもしれません。

 この記事では、そうした一連の時代の流れを大まかに解説(※)いたします。

(※詳細についてはリンク先の個別記事をご確認ください)

 

遊戯王の歴史 2004年

 2004年に起きた出来事を時系列順にまとめていきます。

 

2004年1月22日 「BOOSTER PACK COLLECTORS TIN 2004」販売

 「TIN缶」第2弾となるパック収録商品ですが、アルティメットレア仕様の「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」が特典カードとして同梱されているなど、非常に豪華な内容となっていました。

2004年2月5日 「遊戯王DMエキスパート3・同攻略本」販売

 ゲーム同梱カード3種類、また同攻略本から1種類、計4種類の新規カードが現れています(全1752種)。

 「D.D.アサイラント」という強力な汎用アタッカーが誕生し、メタゲームに少なくない影響を及ぼしました。

 新勢力である【次元斬】の台頭もあり、前年以上に【カオス】が勢いを落としています。とはいえ、メタゲームの中心にいたことは変わらず、引き続きトップメタとして環境の最前線を走っていました。

2004年2月5日 「BEGINNERS PACK」販売

 上記と同日に「BEGINNERS PACK」、いわゆるボックス商品が販売されています。ゲームソフト1種、ストラクチャーデッキ2種、ティーチングビデオ1種がセットとなっており、税抜き価格は6800円と高価な製品でした。

2004年2月26日 「ファラオの遺産」販売

 レギュラーパックから新規カードが56種類誕生しました(全1808種)。

 「深淵の暗殺者」という最高の手札コスト要員が現れ、【カオス】などで採用候補に挙がっています。

 将来的には【深淵1キル】のキーカードとなるモンスターでもありますが、この時期はデッキが成立しておらず、あくまでも汎用カードという位置づけでした。

 他方では、「神殿を守る者」の誕生によって【神殿フルハンデス】が成立しています。

 「メタモルポット」との組み合わせで、相手の手札を全ハンデスした上で5枚ドローするという凶悪コンボであり、一時期猛威を振るいました。しかし、実際のデッキパワーはそれほど高くはなく、騒動の大きさの割にメタゲームへの影響は小さなものにとどまっていたと言われています。

 

2004年3月1日 第15回制限改訂

 遊戯王OCG史上初となる禁止カード制度が導入され、当時の環境に激震が走りました。

 「サンダー・ボルト」を筆頭とする一部のパワーカードがゲームで使用できなくなり、【カオス】などの【グッドスタッフ】系デッキが大きなダメージを負っています。この時はまだ他のパワーカードの生き残りも多く、致命的な被害ではありませんでしたが、もちろん無視はできません。

 そうした流れにより環境が変動していった結果、やがて【ミーネ・ウイルス】が環境に台頭してくることになります。

 「黒蠍-棘のミーネ」と「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」のシナジーを活かしたビート・コントロールデッキであり、以降の環境ではトップメタに成長を遂げています。コントロールデッキでありながら【グッドスタッフ】を下敷きとしているため、どんな状況でも安定して戦えるというのが強みです。

 その後の半年間を「ウイルス地獄」に叩き落とした張本人であり、同時に「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」の強さを世に知らしめたデッキでもありました。

2004年3月中 「PREMIUM PACK 6」一般販売

 2003年12月20~21日に先行販売されていた限定パックですが、この時に一般販売が行われています。

 「マシュマロン」という当時最高クラスの性能を持った壁モンスターが参入し、デッキタイプを問わず有力な新人として取り上げられました。また、低ライフ状態でセットモンスターに攻撃することにリスクが伴うようになるなど、プレイング面にも少なくない影響が及んでいます。

 「シールドクラッシュ」や「八汰烏の骸」も侮れないカードです。特に後者は「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」によりドローソースとして悪用され、【デッキ破壊1キル】などを中心に猛威を振るいました。

2004年3月25日 「STRUCTURE DECK-マリク編-」販売

 ストラクチャーデッキから新規カードが2種類誕生しました(全1810種)。

 「魔法石の採掘」という優秀な魔法サルベージカードの参戦により、【サイエンカタパ】が更なる力を手にしています。また、2番手ではありますが【デッキ破壊1キル】も同じく強化を受け、「サイバーポッド」の禁止カード化によって失った勢いをある程度取り戻したほどです。

 他方では、「深淵の暗殺者」とのループを狙った【深淵1キル】も台頭し始めています。こちらは先攻1キルデッキではなくコントロール系コンボデッキに分類されるアーキタイプとなっており、必ずしもコンボに頼ることなく戦っていける強みがありました。

2004年4月21日 Vジャンプ付録カード誕生

 書籍同梱カードとして新規カードが1種類現れています(1811種)。

2004年5月 第4期スタート

 第3期終了とともに第4期がスタートし、様々な部分に調整が入っています。

 レギュラーパックの体裁変更が行われるなどの大きな変化もありましたが、大部分は第3期と変わらず、ほぼ前期のゲームシステムを引き継いでいる形でした。

2004年5月27日 「SOUL OF THE DUELIST」販売

 レギュラーパックから新規カードが60種類誕生しました(全1871種)。

 【ホルスの黒炎竜】シリーズを含むLVモンスターが現れています。

 非常に強力なモンスターでしたが、当時は【次元斬】などが流行していた関係で真価を発揮できず、環境での活躍は難しい状況でした。【お触れホルス】に近いデッキを組むこと自体は可能でしたが、あくまでも中堅クラスの強さだったことは否めません。

 また、「氷帝メビウス」などの有名どころも参戦してきていますが、こちらも当初はそこそこの評価に落ち着いています。

 「マインドクラッシュ」に至っては全く注目されておらず、ほぼほぼその他大勢に埋もれている状態でした。

2004年5月中 「LIMITED EDITION 6」配布

 週刊少年ジャンプの応募者全員サービスパック企画が実施され、新規カードが5種類誕生しています(全1876種)。

 遊戯王前半期の王者とも言える【ガジェット】シリーズモンスターが現れ、アドバンテージの概念に新たな風を送り込んでいます。しかし、当時のカードプールでは今一つ活躍できず、主戦場は2005年以降の時代となっていました。

2004年6月24日 「BEGINNER’S EDITION 1」販売

 再録パックである「DUELIST LEGACY」シリーズの第1弾~第3弾パックをさらに再録したパックです。新規カードは含まれていません。

2004年7月 2004年度の選考会実施

 最も使用率が高かったのは【カオス】でしたが、先攻1キルデッキである【サイエンカタパ】も代表の一角を奪い取るなど、様々な部分で大きな混乱が起こっていました。

2004年7月25日 第2回世界大会開催

 優勝者の使用デッキは【カオス】でした。海外環境では「魔法石の採掘」などが使用できなかった関係で【サイエンカタパ】もあまり強くはなく、また日本環境で猛威を振るっていた【ミーネ・ウイルス】も存在しないなど、国内環境とは別のメタゲームが展開されていたことがこの結果に繋がったのではないでしょうか。

2004年7月29日 「遊戯王カプセルモンスターコロシアム・同攻略本」販売

 ゲーム同梱カードから3種類の新規カードが現れています(全1879種)。

 「アビス・ソルジャー」という環境クラスの有力な新人が参戦してきています。

 当時としては破格の性能を持ったバウンスモンスターであり、さらに「キラー・スネーク(エラッタ前)」と組み合わせることで実質ノーコストでそれを使用することもできました。こうしたシナジーを活かすことを目的とし、以降の環境では【アビス・コントロール】が成立しています。

 しかし、この時期は「第六感」が無制限カードに居座るなど、カードプールが非常に荒れていたため、思うような結果を残すことは難しい状況でした。

2004年8月5日 「RISE OF DESTINY」販売

 レギュラーパックから新規カードが60種類誕生しました(全1939種)。

 万能サルベージカードの「死者転生」が現れ、【深淵1キル】などを中心に採用候補に名前が挙がるようになっています。

 コストがあるとはいえ、一切の制約なく任意のモンスターをサルベージできるカードはこれが初であり、唯一無二のカードとして非常に重宝されていました。

 また、魔法コピーカードの「連続魔法」の参戦により、【サイエンカタパ】がさらに強化を受けています。

 もはやこれ以上はないと言えるほどの最悪の事態であり、最凶の先攻1キルデッキとして当時の環境を荒廃させました。

2004年8月5日 「PREMIUM PACK 7」販売

 上記と同日に「PREMIUM PACK 7」が販売され、新規カードが8種類誕生しました(全1947種)。

 遊戯王最強クラスの帰還カード、異次元からの帰還」がこの時に現れています。

 除外ゾーンが肥えやすい【次元斬】においては最強のエンドカードであり、【ミーネ・ウイルス】全盛期にもかかわらず一定の成績を残すほどに大幅に強化を受けました。

2004年8月21日 Vジャンプ付録カード誕生

 書籍同梱カードとして新規カードが1種類現れています(全1948種)。

2004年8月25日 「ザ・ヴァリュアブル・ブック7」販売

 書籍同梱カードとして新規カードが2種類現れています(全1950種)。

 

【サイエンカタパ】と【ビート・コントロール】の時代

2004年9月1日 第16回制限改訂

 「混沌帝龍 -終焉の使者-(エラッタ前)」を筆頭に、多数の凶悪パワーカードが禁止カードに指定され、当時の環境が大きく揺れ動きました。

 これまで必須カードを務めていたカードがごっそりとデッキから抜けたことにより、【カオス】などの【グッドスタッフ】系デッキに厳しい弱体化が入っています。また、「死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)」の制限カード化により【ミーネ・ウイルス】も事実上の解体宣言を下されました。

 こうした環境のデフレを受け、以降の環境では【アビス・コントロール】などのビート・コントロールデッキがトップメタに浮上しています。【深淵1キル】などのコンボ系コントロールデッキも勢力を拡大し、従来とは異なるゲームバランスが成立していくようになりました。

 一方で、【サイエンカタパ】は全くの無傷という状況です。さらには「サイバーポッド」の制限復帰によって【デッキ破壊1キル】も大幅に強化を受けるなど、先攻1キルデッキの台頭を招いてしまった制限改訂でもありました。

2004年9月23日 「EXPERT EDITION Volume.1」販売

 以前販売されたパックの収録カードを再録したパックです。新規カードの収録はありません。

2004年10月3日 「MASTER GUIDE」販売

 書籍同梱カードとして2種類の新規カードが現れています(全1952種)。

2004年11月3日 「劇場版 光のピラミッド」特別試写会上映

 試写会来場者配布カードとして新規カードが1種類現れています(全1953種)。

2004年11月25日 「FLAMING ETERNITY」販売

 レギュラーパックから新規カードが60種類誕生しました(全2013種)。

 「ライトニング・ボルテックス」を筆頭に、「賢者ケイローン」などの優秀な汎用カードが多数現れています。

 さらに、「ゴブリンのやりくり上手」によって【やりくりターボ】が成立し、当時の環境における汎用ドローギミックとしての地位を確立しました。

 これらの要因により【グッドスタッフ】系デッキが復権し、前期以上に複雑なメタゲームが展開されていっています。

 また、「ネフティスの鳳凰神」というパワーカードの参戦も見逃すことはできません。

 しかし、この時期は「異次元の女戦士」「D.D.アサイラント」といった除外効果持ちのアタッカーが広く流行しており、高い除去耐性という強みを上手く発揮できない状況に置かれていました。

 他方では、「レスキューキャット(エラッタ前)」などの後世で大躍進を遂げる地雷カードも密かに参入してきています。

2004年12月 「LIMITED EDITION 7」配布

 Vジャンプの応募者全員サービスパック企画が実施され、新規カードが4種類誕生しています(全2017種)。

2004年12月9日 「BEGINNER’S EDITION 2」販売

 再録パックである「DUELIST LEGACY」シリーズの第3弾~第5弾パックをさらに再録したパックです。新規カードは含まれていません。

2004年12月9日 「デラックスセット Volume.2」販売

 上記と同日にセット商品が販売されています。内容は再録パック2種、ストラクチャーデッキ2種、カードプロテクター50枚2セットに加え、アルティメットレア仕様の「ヴィクトリー・ドラゴン」が同梱されている豪華商品となっていました。

2004年12月9日 ストラク2種販売

 さらに上記と同日、新規ストラクチャーデッキ「ドラゴンの力」及び「アンデットの脅威」の2種が同時に販売されています。新規カードはそれぞれ1種類ずつ、計2種類が誕生しました(全2019種)。

 種族シナジーをメインコンセプトに据えており、キャラクターデッキに過ぎなかった従来と異なり、ある程度はデッキとしての体裁が整っていたのが特徴です。

2004年12月18~19日 ジャンプフェスタ2005開催

 会場内で「PREMIUM PACK 8」が先行販売されています。新規カードが5種類誕生しています(全2024種)。

2004年12月20日 Vジャンプ付録カード誕生

 パラレルレア仕様の「E・HERO フレイム・ウィングマン」が同梱されており、アニメ視聴者にはたまらない一品となっていました。

2004年12月30日 「遊戯王DMインターナショナル2」販売

 ゲーム同梱カードから新規カードが3種類現れています(全2027種)。

 ここで誕生した「精神操作」は当時は注目されていないカードでしたが、将来的にはシンクロ召喚システムの導入とともに大躍進を遂げることになるカードです。

 

【まとめ】

 2004年初頭は【カオス】の支配色濃い時代が続いていましたが、3月の制限改訂で禁止カード制度が導入され、当時の遊戯王OCGはカードゲームとしての健全さをある程度取り戻すことに成功しました。

 その後はいくつかの問題を残しつつも比較的穏やかにメタゲームが推移していっています。9月には大規模な制限改訂もあり、ビートダウン界隈に限ってはこの時をもって治療が完了したと見てもいいでしょう。

 しかしながら、そうした真っ当なメタゲームとは裏腹に、極悪先攻1キルデッキの【サイエンカタパ】が1年を通して暴れ続けていた時代でもあります。後半期は【デッキ破壊1キル】の脅威も加わり、その傾向はより一層強まっています。

 結局のところ、2004年も前年と同じく暗黒の空気に包まれていたことは否定できないのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史