遊戯王の歴史 2008年の総括
・前書き
・遊戯王の歴史 2008年
・【ダムドビート】と【メタビート】の時代
・【シンクロダムド】【ライトロード】【剣闘獣】の時代
・【シンクロアンデット】と【スーパードローライダー】の時代
・まとめ
【前書き】
【第6期の歴史14 BF-疾風のゲイル強すぎ問題 あらゆるデッキで使われた時代】の続きとなります。ご注意ください。
第6期突入から10ヶ月が経過し、2008年が終わりを迎えました。カードプールの更新量は542種類とこれまでの倍近くの数値であり、従来よりも新規カードの増加速度が大幅に増していることが窺えます。
一方、ゲームバランスについても明らかに以前とは比べ物にならないほど加速しており、シンクロ召喚の導入に伴う混乱が如実に表れた結果と言えるでしょう。
この記事では、そうした一連の時代の流れを大まかに解説(※)いたします。
(※詳細についてはリンク先の個別記事をご確認ください)
遊戯王の歴史 2008年
2008年に起きた出来事を時系列順にまとめていきます。
【遊戯王の歴史 2000年の総括】
【遊戯王の歴史 2001年の総括】
【遊戯王の歴史 2002年の総括】
【遊戯王の歴史 2003年の総括】
【遊戯王の歴史 2004年の総括】
【遊戯王の歴史 2005年の総括】
【遊戯王の歴史 2006年の総括】
【遊戯王の歴史 2007年の総括】
【遊戯王の歴史 2008年の総括】
【遊戯王の歴史 2009年の総括】
【遊戯王の歴史 2010年の総括】
【遊戯王の歴史 2011年の総括】
【遊戯王の歴史 2012年の総括】
【遊戯王の歴史 2013年の総括】
【遊戯王の歴史 2014年の総括】
【ダムドビート】と【メタビート】の時代
2008年1月上旬 「LIMITED EDITION 11」配送開始
【ドラゴン族】を代表するカードの1枚「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」が誕生しています。しかし、この時期は【ドラゴン族】自体のカードプールがあまり豊富ではなかったため、環境レベルで注目されることはありませんでした。
2008年1月21日 Vジャンプ付録カード誕生
【シンクロダムルグ】などで一時期脚光を浴びた「ダーク・シムルグ」が現れています。
2008年2月21日 Vジャンプ付録カード誕生
2008年2月23日 レギュラーパック「LIGHT OF DESTRUCTION」販売
遊戯王でも有名なカテゴリである【ライトロード】が新たに成立しています。
「裁きの龍」を筆頭に、この時点で既にカテゴリの基本的なカードが出揃っていたため、間もなくトーナメントシーンにも顔を出してくるようになりました。
また、【光属性】における代表的なサポート「オネスト」もこの時に誕生しています。
上記の【ライトロード】ではもちろん、【光属性】絡みのあらゆるデッキで使われていたパワーカードと言っても過言ではなく、これ以降年単位に渡って環境で活躍し続けるモンスターです。
他方では、「剣闘獣ガイザレス」の参入によって大幅に強化された【剣闘獣】が急浮上を果たしたことも大きな出来事に数えられます。
しかし、この時点ではまだサポートが揃い切っていなかったことや、当時のメタ的な都合もあり、2月~4月頃までは中堅勢力にとどまっていました。
2008年3月1日 第23回制限改訂
第5期4回目となる制限改訂が実施されています。
「死者蘇生」の制限復帰を筆頭に、汎用パワーカードに絡んだ規制変動が多く見られた改訂です。
しかし、メタゲームに影響を及ぼすような決定はあまりなく、環境目線では「凪の改訂」と言われていました。
ただし一応の出来事として、「高等儀式術」が制限カード指定を受けていたことは比較的大きな変化に数えられます。
これにより【デミスドーザー】が大幅に弱体化し、【儀式召喚】全体を巻き込んで実質の解体宣言を下されることになりました。
とはいえ、この時期は元々【デミスドーザー】自体が衰退気味だったため、やはりこれも環境レベルでの影響はごく小さなものにとどまっています。
第6期突入 マスタールール制定
新エキスパートルールの代わりにマスタールールが制定され、以降3年間に渡ってOCGの標準ルールとして適用されることになります。
それに伴って新召喚法である【シンクロ召喚】が導入されましたが、これによりゲームスピードの加速に更なる拍車がかかってしまい、少なからずプレイヤーの引退を招いたという負の側面もありました。
2008年3月12日 デュエルターミナル「-シンクロ覚醒!!-」稼働
遊戯王OCGにおける6シンクロの代表「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」が誕生しています。
エラッタ前の当時は調整ミス気味に凶悪なカードパワーを持っており、特に「早すぎた埋葬」とのループギミックが環境でも猛威を振るうことになりました。シンクロ黎明期の混乱を象徴するようなカードであり、ひいては【シンクロ召喚】というシステムそのものへの風評にも影響していた曰くつきのモンスターとも言えるでしょう。
一方、「X-セイバー エアベルン」の誕生によって「レスキューキャット(エラッタ前)」が大幅にカードパワーを上昇させていたことも出来事としては見逃せません。
1枚で5~6シンクロを自在に呼び出せるカードは当時としては反則級の性能であり、以降の環境では【レスキューシンクロ】及び【シンクロダムド】の中核として名を馳せていくことになりました。
2008年3月15日 「STARTER DECK(2008)」販売
8シンクロの有力アタッカーとして知られる「ギガンテック・ファイター」や、6シンクロの被害者「大地の騎士ガイアナイト」などが現れています。
2008年3月21日 Vジャンプ定期購読特典カード誕生
2008年3月28日 「MASTER GUIDE2」販売
2008年3月31日 週刊少年ジャンプ付録カード誕生
当時の8シンクロとしては最高打点を持っていた「レッド・デーモンズ・ドラゴン」が誕生しています。
アニメでの活躍もあり、カードそのものの人気は非常に高かった一方、この直後にレギュラーパックで再録されたというネタ的な経緯から「250円竜」などと揶揄されていた時期もありました。
2008年4月4日 「遊☆戯☆王R(第5巻)」販売
2008年4月19日 レギュラーパック「THE DUELIST GENESIS」販売
新種族である【サイキック族】が誕生しています。
中でも「緊急テレポート」は【サイキック族】のみならず汎用シンクロギミックとしても注目を浴び、特に2008年9月~2009年3月環境を中心に大流行することになります。
一方で、この時期は肝心の【サイキック族】があまり強くなかったため、「緊急テレポート」の全盛期に【サイキック族】が種族単位で活躍することはありませんでした。
また、6シンクロの2大巨頭の一角「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」もこの時に誕生しています。
当時の常識を覆すほどの凶悪なパワーカードであり、これ以降は「ゴヨウライン」の概念がプレイヤーに根付いてしまうことになりました。
2008年5月2日 「遊☆戯☆王GX(第3巻)販売
新規:1/全体:3247
2008年6月21日 ストラクチャーデッキ「-アンデットワールド-」販売
除外メタを代表するカード「王宮の鉄壁」や、将来的に【光アンデット】の有力カードを務める「闇竜の黒騎士」「邪神機-獄炎」が誕生しています。
2008年6月24日 デュエルターミナル「-ワームの侵攻!!-」稼働
将来的に【海皇水精鱗】などで活躍する「ジェネクス・ウンディーネ」「ジェネクス・コントローラー」が現れています。
しかし、2008年時点ではトーナメントレベルでは目立った実績を残しておらず(※)、他の収録カードも含め全体的に環境への影響が乏しいカード群だったことは否めません。
(※一応、当時においても【ジェネクス帝】などのキーカードとして脚光を浴びていました)
2008年7月 選考会実施
【ライトロード】や【剣闘獣】、そして【メタビート】などの勢力も存在していましたが、全体の割合としては【シンクロダムド】が上位を独占する結果に終わっています。
2008年7月19日 レギュラーパック「CROSSROADS OF CHAOS」販売
第6期最強格の7シンクロ「ブラック・ローズ・ドラゴン」が誕生しています。
「ブラック・ローズ・ドラゴン」自体の優秀さもさることながら、そもそもこの時期のカードプールでは7シンクロ自体が貧弱だったこともあり、間もなくエクストラデッキの必須枠に収まることになりました。
一方、【アンデット族】を代表するチューナー「ゾンビキャリア」の参戦も非常に大きな出来事です。
【シンクロアンデット】の成立のきっかけとなったことはもちろん、チューナーとしての有用性も当時の水準を遥かに超えていたため、様々なデッキで汎用シンクロサポートとして声がかかっていたパワーカードです。
2008年7月下旬 「LIMITED EDITION 12」配送
【闇属性】専用の強力なシンクロモンスター「ダークエンド・ドラゴン」が誕生しています。
上記の【シンクロアンデット】ではもちろん、【スーパードローライダー】などでも必須枠として重宝されていた優秀な8シンクロです。
2008年8月4日 週刊少年ジャンプ付録カード誕生
2008年8月9日~10日 第6回世界大会開催
優勝者及び準優勝者を含め、1~4位までの3名が【剣闘獣】を使用していました。
なおかつ、残り1名は【ライトロード】とデザイナーズデッキが上位を占める結果に繋がっており、これまでの遊戯王の常識とされていた「デザイナーズデッキ≒ファンデッキ」という固定概念が明確に覆された瞬間だったと言えるでしょう。
2008年8月21日 Vジャンプ付録カード誕生
「トラゴエディア」が誕生しています。
奇襲性の高い防御札という「冥府の使者ゴーズ」に類似した性質により、これ以降の環境で流行し始めるワンキル対策として活躍していくことになりました。
また、後半の効果によりシンクロサポートやコントロール奪取カードとしても機能するなど、多角的な活躍が期待できた「いぶし銀のカード」です。
上記と同日 「ザ・ヴァリュアブル・ブック11」販売
2008年8月下旬 「LIMITED EDITION 13」配送
「ブラック・ボンバー」の相方として一時期名を馳せた「ジェネクス・ニュートロン」が誕生しています。
これにより【デミスボンバー】の雛形が成立し、将来的には【DDB】系列デッキの一種(※)として開発が進んでいくことになりました。
(※ただし、強さそのものはカジュアルデッキの域を出ない水準でした)
2008年9月1日 第24回制限改訂
第6期1回目となる制限改訂が実施されています。
「混沌の黒魔術師(エラッタ前)」「次元融合」が禁止カードに、「名推理」「モンスターゲート」が制限カードに指定されるなど、【ドグマブレード】のキーカードが一斉に規制されました。
また、「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」を絡めたループギミックに悪用されていた「早すぎた埋葬」「D-HERO ディスクガイ(エラッタ前)」の2枚も禁止カード行きとなるなど、当時猛威を振るっていた凶悪コンボを狙い打った規制が目立ちます。
一方、健全なメタゲームを意識した規制も多く、これにより【シンクロダムド】や【ライトロード】が少なからずダメージを負いました。
代わりに台頭したのが【シンクロアンデット】であり、これ以降の半年間を環境トップとして走り抜けることになります。
この対策として【次元剣闘獣】や【光アンデット】などの各種【メタビート】が試されることになりましたが、一定の抑止効果はあったものの完全に抑え込むことはできず、結局は【シンクロアンデット】優勢の時代が訪れてしまった形です。
2008年9月13日 「EXTRA PACK」販売
「闇の誘惑」の誕生により、上記の【シンクロアンデット】が更なる安定性と速度を手にし、環境におけるポジションをより一層明確なものにしました。
また、「闇の誘惑」を含むドローソースを大量に積んだスーパードロー系デッキ【スーパードローライダー】が新たに考案され、中堅勢力として環境に浮上したことも出来事の一つに数えられます。これには同時に現れていた「ダーク・グレファー」の存在も関係しており、見方を変えれば【デステニーライダー】の後継デッキとも言える存在です。
しかし、最終的には【シンクロダーク】にコンセプトを乗っ取られ、実質的な消滅を迎えてしまうことになる不遇のデッキでもありました。
その他、【剣闘獣】の有力サポートである「スレイブタイガー」や、将来的に【植物族】絡みのギミックに多用される「ローンファイア・ブロッサム」といった有望株もこの時に現れています。
2008年9月21日 Vジャンプ定期購読特典カード誕生
2008年9月22日 デュエルターミナル「-反撃のジャスティス!!-」稼働
遊戯王OCGにおける魔法メタの代表格「ナチュル・ビースト」が誕生しています。
当時のカードプールでは「レスキューキャット(エラッタ前)」1枚から呼び出すことができたため、【レスキューシンクロ】を中心にエクストラの必須枠として定着しました。
しかし、この時期に限って言えば環境的に「ナチュル・ビースト」はあまり噛み合っておらず、「ライオウ」などの方が信頼性が高いと言われていたという事実も存在します。
2008年10月18日 デュエリストパック「-遊星編-」販売
遊戯王史上初の4シンクロ「アームズ・エイド」が誕生しています。
カタログスペックは特別優れているとは言えませんが、当時は素材指定なしの4シンクロは「アームズ・エイド」が唯一だったため、構築によってはエクストラの1枠がこれに割かれるケースもありました。
2008年11月4日 「遊☆戯☆王GX(第4巻)」販売
属性融合HEROでは最強とも言われる「E・HERO アブソルートZero」が誕生しています。
しかし、この時期は環境レベルではほとんど意識されておらず、ポテンシャルの高さは認められつつも実質的にはマイナーカードの位置付けにありました。
2008年11月15日 レギュラーパック「CRIMSON CRISIS」販売
シンクロ時代における暗黒期の象徴「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」が誕生しています。
当時のゲームスピードを大幅に加速させた元凶とも言える存在であり、これ以降は俗に言う「DDB合戦」環境が成立してしまうことになりました。相手に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を出されると大抵勝負が決まってしまうため、逆に自分から先に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を使うことで相手に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」を使わせないという考え方すら浸透していったほどです。
一方、「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」には及ばないものの「BF-疾風のゲイル」の存在も見過ごすことはできません。
当時の水準を遥かに上回る高性能なチューナーであり、将来的には【BF】ではもちろんのこと、シンクロ召喚が絡むデッキでは準必須級の汎用チューナーとして声がかかるまでになっています。
ただし、この時期に限って言えば環境的に強みを発揮できる状況にはなく、その全盛期は2009年以降に訪れることになりました。
上記と同日 デュエリストボックス販売
【/バスター】の筆頭カードである「スターダスト・ドラゴン/バスター」が現れています。
大々的に注目されることこそありませんでしたが、当時においても【ゾンビバスター】など一部のデッキで使われており、トーナメントシーンでも少なからず実績を残していました。
2008年11月27日 遊戯王ゲームソフト「TAG FORCE 3」及び攻略本販売
(※ゲーム同梱カードから3種類、書籍同梱カードから1種類、計4種類の内訳です)
2008年12月4日 デュエルターミナル「-魔轟神復活!!-」販売
デュエルターミナル第4弾となるタイトルですが、新規カード群には目ぼしいカードがほとんどなく、環境目線では特に意識されていませんでした。
2008年12月13日 ストラク「-ロード・オブ・マジシャン-」販売
2008年12月20日 Vジャンプ付録カード誕生
「オベリスクの巨神兵」が誕生しています。
以前現れていた使用不可カードと異なり公式デュエルでも使用できるため、ファンアイテムとして大いに注目を受けていました。また、将来的には【征竜】全盛期においてまさかの抜擢を果たすなど、三幻神の中でも花形と言えるモンスター(※)です。
(※反面、折角の耐性もこの頃の「ブラロ全盛期」の前には逆風であり、カジュアルカードと考えてもそれなりに苦しい立場にあったことは否めません)
その他、種族指定カードや属性指定カードで「幻神獣族」や「神属性」を指定できるようになるといった地味ながら大きな変化も起こっています。
2008年12月20日~21日 「ジャンプフェスタ2009」開催
(※会場内で先行販売された「ANNIVERSARY PACK」から1種類、プロモカードから5種類、計6種類の内訳です)
優秀な疑似リバースモンスター「スノーマンイーター」が現れています。この時期はあまり使われていませんでしたが、将来的には【旋風BF】対策として活躍する遅咲きの優良カードです。
2008年12月下旬 「LIMITED EDITION 14」配送
将来的に【酒ネクロ】のキーカードとして名を馳せる「酒呑童子」が誕生しています。
【まとめ】
2008年冒頭は前年の流れを引き継いだ【ダムドビート】1強の環境であり、勢力図は【ダムドビート】とそのメタデッキという形で推移している状況でした。
しかし、第6期突入直前になると【ライトロード】や【剣闘獣】といったデザイナーズデッキが徐々に頭角を現し、やがては環境デッキとして名を馳せていっています。特に【剣闘獣】は世界大会という大舞台で優勝を果たしたほどであり、これまで不遇の立場にあったデザイナーズデッキの地位を見事挽回することに成功したと言えるでしょう。
一方、国内環境は【シンクロ召喚】の導入に伴って【シンクロダムド】ほぼ一色に染まっており、選考会でも使用デッキの大半が【シンクロダムド】及びその派生デッキで占められていました。
その後、2008年9月の改訂以降は【シンクロアンデット】や【スーパードローライダー】の天下が訪れており、シンクロ召喚ギミックを含まないデッキはそれだけで大きなハンデを持つと考えられるまでになっています。例外として、そうしたシンクロ召喚に徹底的にメタを張ったデッキも勢力を伸ばしていましたが、全体の割合としてはやはり主流デッキ側が強いというバランスが成立していたことは否定できません。
まとめると、前年どころか遊戯王OCG始まって以来の高速環境が到来していたと言っても過言ではなく、マスタールールへの移行によって文字通りゲームの定石が変貌してしまったような状況に陥っていたのではないでしょうか。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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